西部ガスHD研究(10)拡大基調の一方で課題も山積のエネルギー事業

原材料価格の動向が収益に影響

 西部ガスグループのセグメントは、「ガス」「LPG」「電力・その他エネルギー(以下、電力)」「不動産」「その他」に分かれている。今回以降はこのうちエネルギー事業(ガス、LPG、電力)を見ていくが、まずそれぞれがどのような事業を展開しているのか確認しておきたい。

 ガス事業はLNG(液化天然ガス)などを原材料とする都市ガスをパイプラインで、LPG事業は「液化石油ガス(ブタン・プロパン)」を原材料とし、タンクやボンベで供給、それぞれ家庭用や業務用として販売している。電力・その他エネルギー事業は電力の小売が主な事業だ。

 【表1】と【表2】は、西部ガスホールディングス(株)のセグメント別の売上高と利益の推移だ。コロナ禍の影響から脱した2023年3月期以降、エネルギー関連事業の売上高は拡大基調にある。

表1、表2

 このうち主力のガス事業をみると、2023年3月期には直近5期で最高の売上高1,659億7,500万円となったが、これは原料費調達によるガス料金の上方修正による部分が大きい。セグメント利益については22年3月期にLNG調達先にトラブルが発生したことで、高額なスポット(随時契約)市場からの購入を余儀なくされ、それが約53億円の赤字につながっている。

 ガス事業は西部ガスHDのコア事業であるが、このように原材料価格とそれによるガス料金の動向により、とくに利益が左右される傾向が近年顕著だ。

 注目されるのが、販売の基盤となる供給顧客戸数が頭打ちであることだ。21年3月期の113万6,000戸から24年3月期には113万4,000戸と微減。25年3月期は『都市ガス販売』の実績として87万4,000戸であったとしている。

 西部ガスHDの供給エリアである北部九州は、福岡都市圏を除く地域は人口減少が進みつつあり、少なくとも住宅向けの契約が増加することは期待しづらい状況だ。

 LPG事業は25年3月期、LPG販売単価の上昇などにより売上高が増加したものの、セグメント利益は2期連続の赤字。LPGは配送・ボンベ回収・保安点検など流通コストが高く、販売・設備・人件費など非原料コストが重く収益性を圧迫した。【表3】は西部ガスエネルギー(株)の業績の推移で、売上高は増加傾向にあるものの利益面では苦戦している。

表3

 地域ガス会社にも苦戦している企業がみられる。西部ガス佐世保(株)は20年4月に設立された企業。西部ガスHDからガス小売事業などを、西部ガスエネルギー(株)から液化石油ガスの販売事業などを承継。21年4月から長崎県佐世保市とその周辺のほか、佐賀県の一部で営業活動を行っている。

 25年3月期までの2期は連続赤字となった【表4】。管轄エリアでは人口減少が続き、それが顧客、売上高の減少につながり、利益の減少はLPGの原材料となる原油価格の高騰の影響と見られる。

表4

成長領域とされる電力事業の現状は

 電力事業は、小売事業と再生可能エネルギー事業の大きな2つの柱から成る。前者は16年の電気事業自由化にともない、小売電気事業者として参入。西部ガス(株)が「Smart Greenでんき」として九州電力よりも安いプランを提供している。後者は12年に設立されたエネ・シード(株)が中心となっている。

 エネ・シードは福岡県内のほか周辺地域に、太陽光発電所(23カ所)、風力発電所(1カ所)、再エネ電源開発などを保有している。【表5】は同社の業績だが、年々、事業規模を拡大していることが見て取れる。

表5

 しかし、【表1】にあるように電力事業も収益面では安定的とは言いがたい。これは九州電力などからの電力調達に大きく依存しており、そして電力の調達価格の動向に強く影響を受けるためだ。21年3月期に赤字となっているのはその象徴で、利益が10億円を下回った23~25年3月期も基本的には同じ構図だ。

 電力事業は「エネルギー事業の成長領域」と位置づけられているが、電力調達の外部への依存が強いままでは、収益性の改善は覚束ない。次回は、エネルギー事業の成長・強化に貢献することが期待されている、「ひびきLNG基地」や「ひびき発電所」を中心に見ていきたい。

【特別取材班】

< 前の記事
(9)

関連記事