2024年11月21日( 木 )

コロナでも前進あるのみ 新倉庫建設で九州全域への配送を強化

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(株)竹田商会

福岡トップの鋼材業者に

 (株)竹田商会は1964年に、代表取締役社長・竹田奉正氏が福岡市博多区上牟田で創業したのが始まり。創業当初は代表自らオート三輪1台で鉄工所の製品などの資材運搬を手がけた。その後、鋼材スクラップの引き取りと販売などに着手し、鋼材販売とスクラップの回収・販売という同社の事業の原型を確立する。

 創業して56年、この間同社は積極的に設備投資を行って、事業を拡大してきた。71年には事業拡張にともない、博多区金隈に事務所兼スクラップヤードを整備(83年に拡張)。90年に宇美町に工場・倉庫・事業所を全面移転した。93年には太宰府市にスクラップヤードを移転し、97年に北九州市若松区にスクラップヤードと鋼材倉庫を備えた北九州支店を開設。

 2000年代に入ると、05年に福岡市東区東浜に工場を新設。06年に箱崎ふ頭にスクラップヤードを開設し、09年には現在の新社屋が竣工して、本社を移転した。19年12月期には売上高が135億9,000万円に達して福岡トップの鉄鋼販売業者としての地位を確立。竹田氏は13年から福岡鉄鋼販売業組合で理事長を任されている。

4つの事業でリサイクルの循環を

本社ビル
本社ビル

 同社は鋼材事業を始めた当初から、顧客への鋼材販売後に、加工時に出るスクラップの引き取りを始めた。同社の現在の地位は、このように作業効率を高め、利益を出すことを日々積み重ねてきた結果としてもたらされたものであり、また同社の事業の多角化へとつながっている。

 現在、同社には4つの事業部門がある。金属原料部門、鋼材販売部門、鋼材加工部門、建設部門だ。

 金属原料部門の拠点は、東浜工場、箱崎ふ頭スクラップヤード、北九州支店の3つ。スクラップをグレードごとに分別し、海上ルートで日本各地および海外の電炉メーカーに供給している。

 鋼材販売部門の拠点は宇美倉庫。同倉庫では100種類を超える鋼材を常時ストックし、顧客の注文を受け次第九州どこにでも即出荷できる体制を整えている。表面処理鋼板などの取引量は九州トップクラスだ。

 鋼材加工部門の拠点も宇美倉庫。同倉庫で曲げ、穴あけ切断などの加工を施して付加価値を高めた鋼材を製造している。近年、レーザー切断機、プラズマ切断機などの設備を新調し、その加工技術を高めている。

 建設部門は1997年の設立と比較的新しい。同社が長年鋼材を取り扱うなかで培ったノウハウを活かし、資材の提供、家屋・ビルの解体などを広範囲に手がけている。

 同社では、この4部門全体の事業を通して、鉄の原料となるスクラップの収集・分別、鉄鋼メーカーへの供給を行っており、資源を有効活用することによる環境への貢献を追及している。また、環境マネジメントのため、2005年にISO14001および9001の認証を取得している。

コロナでも前進あるのみ

 コロナ禍で建設需要が落ち込み、鋼材業界全体の景気が冷え込むなか、同社も影響は避けられない。廃業する同業者もいるなかで、同社の今期の売上高は前期比15%減くらいになると見込んでいる。また、コロナ禍以前に計画が決まっていたものは別として、今後、都市部のオフィスやホテルの新規建設案件が減っていくことが予想され、鋼材業界にとっても厳しい状況が続く。

 このような状況のなかでも、竹田氏は以前から計画していた新倉庫建設を予定通り進めている。新倉庫を建設するのは、現在の宇美倉庫が鋼材の加工場も兼ねており手狭となっているためだ。すでに大刀洗町に用地を取得しており、竹田氏はその狙いについて、「筑後小郡インターチェンジに近く、南九州の顧客によりスピーディーにお届けできます」と語る。

 総投資額は約9~10億円、来年竣工の予定だ。新倉庫は総面積2300坪、倉庫1250坪、事務所棟90坪、事務所棟は3階建てで社員寮を併設する。10tクレーン車を5台、4・8tクレーン車は4台配置する。倉庫の面積自体は宇美倉庫の1700坪より一回り狭いとはいえ、現在の宇美倉庫では3つにわかれている建物を新倉庫では1つの建物に集約し、収納、管理、出荷などの機能を強化する。

 竹田氏は以前から新倉庫の設立に向けて準備を進めており、毎年採用する社員への研修を行ってきた。新倉庫には主に宇美倉庫で勤務する従業員が移ることになるが、社員用の寮を用意するなど、従業員が安心できる環境整備にも心を砕いている。

 新倉庫の稼働後は、九州全域の顧客にこれまで以上にスピーディーに豊富な鋼材を届けられるようになる。今後の事業展開について、竹田氏は新たに事業や取り扱う製品を増やすのではなく、新倉庫の設立によるスケールメリットを活かして九州全域を中心に顧客を開拓していくと意気込んでいる。

 鋼材業界は売上に占める原価(仕入れ値)が約90%と非常に高く、粗利が極めて少ない業界だ。そのなかで利益を出し続けるには、「努力しかない」と竹田氏は語る。これまでの56年の歴史は、作業の効率性の向上や新規顧客開拓による売上増のための努力の積み重ねであり、社長以下、それを徹底して実行していくのが同社だ。

仕事とスポーツの両輪で結束する会社に

 同社はスクラップ事業や鋼材販売で高い知名度を誇るのみならず、野球チームも名門として名声を誇っている。全国大会出場などの実績をもち、社員のなかには甲子園経験者もいる。竹田氏は、スポーツを通じてコミュニケーションを図れることをメリットとして挙げるほか、体育会系の競技を経験することにより得られる忍耐力と粘り強さを評価する。

 竹田氏は同社の方針として、スポーツ、とくに団体競技である野球を通して、社員の健康維持やストレスの軽減、コミュニケーションの強化を図っている。応接室には野球部が獲得してきた優勝トロフィーや楯などが並べられており、社員が仕事のみならずスポーツにおいてもチームとしてまとまり、成果を上げてきたことがよく理解できる。

 今後も同社のチームは全国大会を目指す強豪として名を馳せていくとともに、社員は鉄のように強く結束して、コロナ禍のなかでもしなやかに事業を展開していくだろう。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:竹田 奉正
所在地:福岡市博多区上牟田1-17-21
設 立:1980年12月
資本金:3,000万円
TEL:092-432-0088
URL:http://www.takeda-shokai.com


<プロフィール>
竹田 奉正
(たけだ ほうせい)
1964年8月、個人創業。80年12月(株)竹田商会設立、同社代表取締役に就任。趣味はゴルフ、読書。福岡鉄鋼販売業組合理事長、九州産業大学付属九州高等学校監事、九州産業大学硬式野球部名誉会長、(株)日本政策金融公庫・福岡懇話会代表幹事を務める。

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