2024年11月22日( 金 )

【IR福岡誘致開発特別連載48】横浜IRは菅政権の戦略転換で東京・築地市場跡地にいくか

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横浜 イメージ コロナ感染の再拡大、東京オリンピックをめぐる対応により菅政権が支持率の低下を招いているなか、22日投開票予定の林文子横浜市長の任期満了にともなう同市長選挙(8日告示)が、衆議院議員総選挙の前哨戦として大いに注目される。いうまでもなく、横浜市は菅首相(神奈川2区選出)の選挙区でもある。

 同市長選の最大の争点は、現職の林市長が積極的に推進してきた"IR誘致開発事業"であり、これはコロナ禍収束後の経済再生策の目玉である。

 "安倍・トランプ密約"の主な対象事業者であるラスベガスサンズを含むすべての米国カジノ投資企業は、横浜市および神奈川県行政の対応に不満を示し、コロナ禍以前に早々と撤退していた。

 しかし、先日、セガサミーとゲンティン・シンガポールが本件事業母体のコンソーシアム組織(ほかはスーパーゼネコンの鹿島建設(株)、(株)竹中工務店、(株)大林組および大手の総合警備保障(ALSOK)(株)による)を組成することが突如発表され、予想外の発表として世間を驚かせたばかりである。なお、筆者は昨年からこのことを予測し、その背景について説明している。

 しかしながら、前々号46号)の通り、菅首相とは兄弟分である小此木八郎氏(前国家公安委員長、前衆議院議員)が横浜IR誘致開発に反対を表明し、同市長選挙に立候補したことで、情勢は一変した。加えて、自民党横浜市連は当初は現職の林市長を全面的に支援し、IR誘致開発にも積極的であったが、今回自民党の横浜市議会議員36人のうち30人が翻意して菅首相、小此木氏側に付いたため、形勢が完全に逆転した。林市長の再選は大変困難な状況になったといえよう。

 一方、菅首相、林市長、小此木ファミリー(八郎氏の実父の小此木彦三郎氏以来)とも強いつながりを持つ横浜港湾関係者のドン藤木幸夫氏(藤木企業(株)取締役会長)は、今回の選挙では、IR誘致開発に反対を表明している立憲民主党を主体とした野党が推薦・支援する山中竹春氏(元横浜市立大学教授)の選対会議の名誉会長に就任し、全面的に支援している。山中氏は小此木氏、林氏の有力な対抗馬の1人とみられている。

 これにより、今回の横浜市長選挙の性質は変化した。つまり、小此木氏(自民党菅政権)か山中氏(立憲民主党ら野党)氏かの二者択一の選挙となったのであり、横浜IRはすでに同選挙の主要な争点ではなくなっている。両者とも横浜でのIR誘致開発に反対しており、どちらが勝っても誘致開発は行われないということになる。

 それでは、選挙結果を受けて、セガサミーグループはどうするのか。すでに説明している通り、彼らにとってすべて織り込み済みと考えるのが妥当である。先週、TBSの「報道1930」において、田崎史郎氏(元時事通信)と伊藤智永氏(毎日新聞)は、菅政権には米国以外の海外カジノ投資企業に全く興味がなく、横浜でのIR誘致開発事業は難しいと判断しているといい、場合によっては東京の築地市場跡地か有明地区が候補地になるかもしれないと述べた。これは正に筆者の予測通りの展開だ。

 その際、里見治・セガサミー会長がこの選挙結果を機にゲンティン・シンガポールをパートナーから外す可能性さえもあると考えられる。菅政権が米国以外に興味がないことを理由として、米国ラスベガスサンズへと切り替えるかもしれない。ラスベガスサンズは今回のコロナ禍が収束した際には、今後の目標を"アジア市場に特化する"としており、その可能性はある。"安倍.トランプ密約"の主なカジノ企業である同社への切り替えは、菅政権のみならず安倍前首相、里見会長、藤木氏、小池都知事など関係者が全員納得できる戦略転換だといえる。

 この世界的なコロナ感染再拡大により、どの国も経済環境が一変した。IRビジネスは観光客を主な対象としていては採算が取れないということが、米国ラスベガスを始めとして、明確に露呈されたのだ。それゆえ、我が国では、巨大な後背地人口を有する、東京都中心の関東都市圏か、大阪市中心の関西都市圏か、福岡市中心の北部九州都市圏の3カ所しか可能性はないと繰り返し説明してきた。こうして大阪IR、東京・築地市場跡地、福岡海の中道に絞り込まれといえる。

 上記、3カ所ともコロナ感染の再拡大の影響を受けており、政府は来年4月末に迫る申請受付締切日を延長せざるを得ないだろう。コロナ禍収束後の具体的な経済再生策として、このIR誘致開発事業より魅力的なものはほかにはない。

【青木 義彦】

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