「アジアのなかの九州」として世界に向けた発展を目指す（後）

国際金融機能誘致に尽力　九州に新しい世界を

　――コロナ禍でオフィスに入居者を呼び込めるのか、賃料を維持できるのかと懸念する向きもあります。

　倉富　福岡の都市力を上げるため、オフィス需要を維持していく必要があります。天神の再開発については、福岡ビル・天神コア・天神ビブレ跡地の再開発ビル「福ビル街区建替プロジェクト」が延床面積約14万ｍ²、「天神ビジネスセンター」が延床面積約6万ｍ²であり、ほかにも「イムズ」など建替え計画が目白押しです。それらにより生まれるオフィスを充足させていくためには、マーケットをつくり出す必要があります。都市機能が機能すればするほどプラスになるでしょう。賃料を上げるつもりで取り組む必要があります。

　そのために取り組みたいことは2つあります。1つはスタートアップの誕生を支援し、企業として成長してもらうことです。もう1つは、海外の企業を福岡に呼び込むことです。現在、福岡市などと一緒に国際金融機能の誘致に取り組んでいるところであり、金融に限らず一定の機能を有した新しい要素を福岡・九州に取り込み、企業として育ってもらいたいと思っています。

　このようにして新しいマーケットを生み出さないと、天神地区のオフィス供給を充足させることはできないでしょう。これは福岡・九州にとって大きな試練です。しかし、それを乗り越えたら、まったく新しい世界が見えてくると思います。

　また、福岡空港にとっても定期的に利用するビジネス利用客の確保という点で非常にプラスになります。コロナ禍でリモートワークでも大丈夫という領域もあるでしょうが、実際に行かないとわからない、見ないとわからないものはあります。東京に伍していくまでではないにしても、都市の集中度を高められれば九州の魅力になります。

　アジアから地理的に近いことは九州の魅力の1つです。天神、博多の良さの1つは空港から非常に近いことです。この魅力をアピールして海外から集まってもらうことが大事です。「器が先か、中身が先か」という話になるかと思いますが、器がないと企業はきません。その器となるのが、天神・明治通り地区の機能更新だと思います。

　経済団体としても九州を元気にするために大いに活用し、一緒に育てていく必要があります。何もしなければ「九州のなかの福岡」にとどまります。福岡の成長はアジアに向かって追求していくべきであり、これは九州全体の成長にも絶対につながるというのが基本的な考え方です。国際機関を呼び込むことも検討しています。

　――国際資本に投資させ、産業を興していくなかで、IR（統合型リゾート）は九州経済を底上げし、牽引すると期待できます。

　倉富　現在、九州では長崎が手を挙げており、その実現のため尽力したいと思います。IRへの投資およびIRの運営において、雇用が拡大し、食材などいろいろな取引関係が広がっていきます。カジノのみならず、イベント、催事が行われ、宿泊、飲食にも影響がおよびます。観光のために動くので、九州全体にも波及する可能性があり、IRを誘致することの意義は大きいと思います。現在、国の枠は3カ所であり、九州に1つ誘致できるかどうかという状況にあり、全力で勝ち取っていくつもりです。

　――ヨーロッパを歩くと、西鉄がグローバル企業ということがよくわかります。このグローバル企業の社長・会長を歴任されてきた経験を踏まえ、九経連の国際化にも道筋を付けているのではないですか。

　倉富　地道ながらもずっと攻めていくことが大事だと思います。九経連として将来的には企業のマッチング、成長のためのサポートをしっかりと行える体制を構築できる可能性はあります。企業にも自力で動くことが求められますが、九経連もそれに伴走していきたいと思います。

（了）

【文・構成：茅野　雅弘】

＜プロフィール＞
倉富 純男（くらとみ すみお）
1953年、福岡県うきは市生まれ。78年青山学院大学卒業、西日本鉄道（株）入社。都市開発事業本部商業レジャー事業部長、取締役常務執行役員経営企画本部長などを経て、2013年6月に代表取締役社長就任。21年4月から代表取締役会長。同6月、九州経済連合会会長に就任。福岡県経営者協会会長、九州経営者協会会長も務める。

＜ASSOCIATION INFORMATION＞
会　長：倉富　純男
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設　立：1961年4月
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