2024年12月23日( 月 )

任天堂創業家のファミリーオフィス~相続した莫大な資産を元手に企業買収に乗り出す(前)

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 「ファミリーオフィス」――日本人には馴染みのない経済用語だ。欧米では古くから、超富裕層たちが一族の財産を守り、永続的に引き継いでいく手段として活用してきた。日本でも、莫大な資産を運用するファミリーオフィスが誕生した。ゲーム機器を製造・販売する任天堂(株)の創業家、山内家の親族たちである。

任天堂、創業家のファミリーオフィスが企業買収に初参戦

 (一社)Yamauchi-No.10 Family Office(以下、山内家ファミリーオフィス)(東京都港区)が、山内家の資産を運用するファミリーオフィスである。

 米通信社ブルームバーグ(2021年1月5日付)が「任天堂創業家のファミリーオフィスが企業買収に初参戦」と報じた。

 〈山内家ファミリーオフィスは、ジャスダック上場のソフトウエア開発会社、ジャパンシステムの経営陣による買収(MBO)を資金支援する。同ファミリーオフィスの運用資金総額は1000億円超に上る。〉

    ジャパンシステムをめぐり、香港に拠点を置く投資会社であるロングリーチグループが株式公開買い付け(TOB)を実施。これに対し、川田朋博社長ら経営陣は買収に対抗するため、MBOを提案した。

 〈山内家ファミリーオフィスは川田社長ら執行役員によるMBOが企業価値の向上に資すると判断。川田社長が設立する買収目的会社に優先株で約35億円を出資する方向で調整している〉と関係者の話を伝えた。

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 川田社長はMBO資金150億円を調達できなかったようだ。2月16日にロングリーチグループによるTOBが成立、ジャパンシステムはジャスダックを上場廃止になった。山内家ファミリーオフィスは初戦を勝利で飾れなかった。

故・山内溥元社長の遺産運用を目的にファミリーオフィス設立

 ブルームバーグ(21年5月25日付)は続いて、「任天堂中興の祖からバトン受けた28歳、創業家資産で技術革新支援」の見出しで、山内家ファミリーオフィス代表の山内万丈氏のインタビューを報じた。

 同オフィスは、任天堂の故・山内溥元社長の遺産運用を目的に20年6月に設立された。

 〈万丈氏は溥氏の養子で、血縁的には孫に当たる。18歳までを任天堂の本社がある京都で過ごし、大学入学を機に上京。卒業後は博報堂に勤めたが、19年に退社し、一族の支援を得てファミリーオフィスを立ち上げた。いとこや兄弟を差し置いて自分が養子になり、21歳で巨額の遺産を相続した意味を考える中で「山内家の理念を実践し、次代へ引き継いでいく組織を作ろうと思った」と説明する。〉

    万丈氏は養子のため戸籍上は溥氏の次男だが、実父は溥氏の長男の克仁氏。克仁氏は専修大学を卒業。電通を経て任天堂に入社。アメリカ支社勤務を務めた後、本社に戻り、01年から広報企画室部長に就いていた。

 克仁氏は16年に任天堂企画部長を退任し、山内家の資産管理会社(株)山内の代表取締役に就任。(株)山内は任天堂の旧本社社屋・山内任天堂をホテル「かぶやまProject」としてリノベーションし、21年4月30日に開業した。万丈氏は(株)山内の上級執行役員である。

 克仁氏は、京都祇園の「伝説の芸妓」と言われた佳つ乃さんと18年12月に再婚し、週刊誌を賑わせた。

 山内ファミリーオフィスは、元シュローダー・インベストメント・マネジメント幹部の市村吉也氏や元ゴールドマン・サックス証券アナリストの杉山賢氏ら約10人が主要メンバーとして運営に携わっているという。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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