2024年大統領選に影を落とす米中対立の行方(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸「サイボーグ兵士」めぐり米中の競争激化
トランプ、バイデン両氏に多額の政治献金を重ねてきた、世界1の資産家ことイーロン・マスク氏が近年、力を入れている「ニューラリンク」と命名した脳とAIを合体させるビジネスをめぐって米中間で新たな火花が散っています。というのは、ニューラリンクの顧問のハーバード大学チャールズ・リーバー教授がアメリカで逮捕されてしまったからです。
その理由は中国政府が進める「千人計画」を通じて、アメリカの先端技術情報を流した容疑です。アメリカは2018年「サイボーグ兵士2050」計画を開始し、人間とマシンの合体を進めています。新たな戦場で活躍するのはサイボーグ兵士という考えに他なりません。
ところが、対抗上、中国も同様の戦略を進めているわけです。その点、リーバー教授は2015年に「ナノスケール移植デバイス・システム」に関する特許を取得しており、中国から見れば「喉から手が出るほど欲しい技術」の持ち主です。そこで、中国はリーバー教授にアプローチし、中国科学院の外国人会員に迎え入れました。
世界初のサイボーグ兵士をめぐる米中の競争が過熱しています。リーバー教授の持つ特許はポスト・コロナ時代に向けたデジタル監視にも応用が期待されているため、中国はその頭脳を得るために非合法な手段に訴えたものと思われます。マスク氏も間接的ながら技術移転に関わっていた可能性が指摘されているようです。
この一件も電気自動車のテスラを通じて中国市場に深く食い込んでいるマスク氏とバイデン大統領との関係に焦点を充てることになるわけで、トランプ氏からすれば、格好の攻撃材料になるでしょう。しかも、マスク氏は2021年7月1日、中国では共産党の創立100周年を祝う行事が盛大に開催され際、「中国共産党100周年を本心から祝いたい。とくに中国のインフラ整備はすばらしい」とツイートし、中国のテレビにも出演し、「中国はじきに世界1の経済大国になる」とも発言したのです。
確かに、世界最大の電気自動車市場を抱える中国はマスク氏にとっては大事なお得意さまに違いありません。そんな中国で、このところ相次いでリコール問題に直面するテスラであれば、中国共産党を味方につけるのは至上命令なのでしょう。新たに電気自動車用のデータセンターを中国に立ち上げ、中国政府と必要な情報を共有する姿勢を見せています。
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緊張下にある米中関係と改善に向けての日本の役割(前)とはいえ、アメリカにとって最大の脅威と位置付けられている中国との深い関係をもつマスク氏とバイデン大統領が親しいことは、トランプ氏にとっては絶好の攻撃材料になりそうです。実は、テスラやニューラリンク以外にもマスク氏は「スペースX」を通じてNASAの宇宙開発にも深く関わっています。そのため、中国はマスク氏のもつロケットや衛星の技術にも関心を寄せているようです。
ことほど左様に、中国とのパイプや経済関係はアメリカ企業にとっても死活問題化する要素を多分に含んでいるわけです。2024年に迫りくるアメリカ大統領選挙においても、バイデン・トランプ対決の行方を左右する可能性を秘めていることは間違いないでしょう。
(了)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。関連キーワード
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