2024年07月28日( 日 )

100歳目前でも大活躍中の世界のリーダーたち~元気の秘訣は?(前)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

「マレーの星」マハティール氏

 2月1日、石原慎太郎氏が亡くなったことが明らかになりました。芥川賞を受賞した小説『太陽の季節』でデビューした後、政治の世界に飛び込み、一時は自民党の派閥横断的な政策集団「青嵐会」を率い、政界の風雲児として、「次期総理」の呼び声も高かったのですが、その「総理待望論」に応えることなく、脳梗塞や膵臓がんに苦しむ晩年だったと思われます。享年、89歳でした。

 また、同じ政界でいえば、「水玉模様のネクタイ」がトレードマークだった海部俊樹元総理が、去る1月9日に肺炎が原因で91歳の生涯を閉じました。昭和6年、名古屋で生まれ、早稲田大学の「雄弁会」で政治の道に目覚めたと言われています。昭和35年の衆議院選挙で初当選し、その後「昭和生まれの初の総理大臣」に上り詰めたわけですが、平成21年の衆議院議員選挙で落選し、政界を引退。引退後は世界連邦運動協会の会長などを務め、中国や台湾との交流も重視し、日中の対話を心がけていました。相次いで亡くなられたお2人に心よりご冥福をお祈りします。

高齢ビジネスマン イメージ    ところで、世界各地でオミクロン株が猛威を振るっていますが、海外に目を転じると、100歳目前でも元気に活躍中のリーダーが目立ちます。彼ら、彼女らはワクチンに頼らずともすこぶる元気のようです。

 たとえば、昨年末から入退院を繰り返しているマレーシアのマハティール元首相は96歳です。早ければ本年中にあるといわれる総選挙に向けて陣頭指揮を執る姿勢を見せています。

 何しろ前後2回、通算24年間も首相を務め、今でも自ら率いる野党の党首として目を光らせています。「ルック・イースト」(日本に学べ)政策を推進したマハティール氏ですが、彼の辞書には「引退」という言葉はなさそうです。92歳で現役の首相を務めていたため、当時、ギネスから「世界最高齢の現役首相」として認定されました。

 政治家の場合は引退すれば「ただの人」になり、生気を失うことが多いようです。その点、マハティール氏の場合は、首相を退いた後も、地元選出の国会議員として今日まで現役政治家として「汚職追放」と「災害復興」に取り組んできています。これこそが健康長寿の秘訣かもしれません。

 このところ大雨や洪水で被害が深刻化しているマレーシアです。入院中も「退院でき次第、被災地を訪ね、復旧に尽力せねば」とツイッターで熱い思いを綴っているマハティール氏です。まだまだこれからの活躍を期待させる「マレーの虎」ならぬ、「マレーの星」といえそうです。

「米中最終戦争」の可能性に言及

 アメリカのキッシンジャー元国務長官は98歳になりますが、昨年末に新著『人工知能の時代と人類の未来』を出版しました。キッシンジャー氏は、この本のために、過去1年、毎週日曜日の午後、Googleのシュミット元CEOとMITのコンピュータ学部長のハッテンロッヒャー氏と議論を重ねたそうです。いわば3人組の「文殊の知恵」を結集した成果に他なりません。

 そのメッセージはシンプルですが、警鐘に富んでおり、「このまま手をこまねいていれば、世界の終焉につながる」というわけですから無視できません。なぜなら、人工知能の進化は人間の理解や都合を無視して暴走する可能性が高いからです。

 かつてキッシンジャー氏は核戦争の脅威を回避するため米ソ核交渉を推進しました。その結果、今でも「キッシンジャー・ロシアスパイ説」が根深く残っているほどです。今回の共著のなかで、ノーベル平和賞の受賞者でもあるキッシンジャー氏は「米中間の最終戦争の可能性」にも言及しています。

 というのも、アメリカも中国もAI兵器やロボット兵士の研究開発に精力を注いでいるため、早晩、人間がコントロールできなくなり、AI独自の判断で戦争が勃発するリスクは否定できないからです。そうした最悪のシナリオを想定しながら、人類の生き残る道を模索するには「国際的な政治家と技術者の相互理解の場を早急に立ち上げることが欠かせない」というのが結論になっています。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。

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