次世代のその先へ アート×デジタルでAIを超える未来(後)
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国際政治経済学者
浜田 和幸
(株)HARTi 代表取締役CEO
吉田 勇也デジタル化が加速するなか、アートによるイノベーションとビジネスの融合が注目されている。AIが進化する社会における本当の人の幸せとは何か。コミュニケーションの未来はどうなるのか。国際政治経済学者・浜田和幸氏と、デジタルを活用して新たなアート市場を創造する(株)HARTi代表取締役CEO・吉田勇也氏が語り合った。
デジタル×リアルの未来
吉田 NFTやトークンの取引での利用割合はまだ0.1%以下と言われていますが、銀行口座をもたない世界17億の人々はNFTのゲームで稼ぐGameFi(ゲーミファイ)などデジタルを積極的に取り入れています。既存の銀行システムに頼らないこれらの仕組みは、さらに普及するでしょう。
浜田 金融と通信が融合すると、銀行口座をもたない17億人のチャンスが広がります。これらの人々を味方に付けて、各国の伝統文化に目を向けなければ、人類全体の生き残りは難しいでしょう。若い世代に向けて、「自分なりの夢を実現してほしい」という応援をいただけませんか。また、アートを楽しむことで延命長寿が期待されますが、読者に向けて、人生100年時代のアートとの向き合い方を聞かせてください。
吉田 かつて100m走で10秒を切る記録がなかった時代に、米国のジム・ハインズ氏が9.95秒の記録を出してから、9秒台の記録が続出しました。人類にとっての「限界」は単なる思い込みであり、若者には上の世代がしていないことに挑戦してほしいと感じます。また、多くの知見を持つ上の世代が、新しいテクノロジーを本当に良いものだと理解して初めて投資や技術革新が生まれるため、世代間の交流が必要です。幸福度が世界62位(世界幸福度レポート2020)の日本では、アートが日常に精神的な豊かさをもたらすことに多くの人が気づき、金銭史上主義から価値観を変えていくことが必要です。
浜田 アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は禅に心を惹かれていました。本質的なことは、自分の心にあります。日本人が目覚めてアートを楽しみ、日本の文化が世界をリードすることを目指さなくてはいけませんね。
吉田 デジタル市場が伸びていますが、NFTやウェブはあくまで手段であり、人の生活をどれだけ豊かにできるかが本質です。人が最も感動するのはリアルの場であり、海外ではリアルの人のつながりやコミュニティがNFTからも生まれています。
浜田 米国のテスラCEO・イーロン・マスク氏は、人はデジタルの進化にかなわないため、脳とAIを合体させてサイボーグ化しなければAIの奴隷になると言いますが、それで本当に幸せな人生を追求できるのでしょうか。手遅れになる前に境界線を設け、立ち止まることが必要です。さらに飲まず、食べず、寝ずに肉体の限界を超えてロボットのように戦う兵士の研究が進んでいますが、便利さや効率を追い求めすぎると「人は要らない」という結論になりかねません。その歯止めをかけるのが、アートの力です。づくり手が五感でつくった作品から想像することで、人はお互いに気持ちを受け取ることができます。
22年、デジタル市場の天下分け目の年
吉田 デジタル市場にとって22年は「天下分け目の年」になります。次の「ウェブ3.0」は、データを保管するサーバがブロックチェーンで分散しており第三者がいなくても取引が成立する「信頼のインターネット」の時代で、今年から諸外国では爆発的に注目が拡大すると見込まれます。
日本は最先端デジタル分野の規制が厳しすぎて、起業家がシンガポールやドバイなどに移住してしまうため、ウェブ3.0の位置づけや、どうベンチャー企業を守り育てるのかによって、日本のデジタル業界の未来が決まります。ウェブ3.0はGoogleなど大手IT企業が巨大な力を手にするのではなく、民主主義的なインターネットが普及する時代であり、米国ではすでにその流れになっています。そうすると株式会社のかたちも変わり、株主資本主義や創業者が大きな利益を得ることがなくなります。米国では、株式会社を起業して清算し、特定の管理者や主体をもたずに直接出資し、ガバナンスによる意思決定を行う「DAO(自律分散型組織)」に移るのが最先端のプロジェクトの在り方です。経済の仕組みそのものも変わるかもしれません。
浜田 自由に動ける人が時代の先を読んで受け皿をつくり、新しい潮流に気づいていない人に注意を促すことで、人々の人生を豊かにして新たな市場が広がることを願っています。税制や社会の仕組みでは、日本でも、富裕層が慈善事業に寄付しやすい仕組みが必要です。この流れを捉え、どれだけ視野を広げられるかが日本の転換点になるでしょう。
(了)
【石井 ゆかり】
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著には19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。2021年7月出版の最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。吉田 勇也(よしだ ゆうや)
(株)HARTi代表取締役CEO。1995年生まれ。6歳から15年間、書道家として活動。広島大学附属福山高校を経て中央大学法学部卒業。中央大学法学部在学なかに世界40カ国をバックパッカーとしてめぐり、留学先の英国・ウェストミンスター大学でアートマーケティングを専攻。2019年、東洋経済「すごいベンチャー100」、Plug and Play Japan Brand&Retail部門でAward(最優秀賞)を受賞し、20年、Forbes 30 UNDER 30 Japanに選出された。「感性がめぐる、経済をつくる」を企業理念に、現代アーティストのプロダクション事業やNFT技術を活用した新たなアート市場の創造を行っている。関連キーワード
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