ブックオフ創業者坂本氏死去、稲盛氏の叱咤で再起(中)
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ブックオフコーポレーション(株)創業者で、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」などを展開する「俺の株式会社」名誉会長の坂本孝氏が1月26日、肺疾患のため死去した。81歳だった。坂本氏はハーバードビジネススクールの「ベンチャーオブザイヤー賞」を受賞するなど起業家として数々の賞を受賞するなど、「時代の寵児」ともてはやされたが、2007年に「文春砲」の直撃を受け、奈落の底に突き落とされる。しかし、稲盛和夫氏の叱咤を受け、心機一転、新事業に取り組んだ。今回は坂本孝という「異才」の人生をふりかえることにする。
「文春砲」で引責辞任
『週刊文春』2007年5月9日号は、『「デタラメ上場」ブックオフに巨額リベート発覚』の見出しで、ブックオフコーポレーション(株)の坂本孝代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)の不正行為を報じた。坂本氏が、親族が代表を務めていた会社を通じて、ブックオフの加盟店舗に什器を納入した販売会社からリベートを受け取っている、決算書の改ざんを指示したといった内容の記事で、内部告発だった。
「文春砲」の一撃は強烈だった。報道を受けて、ブックオフの株価は大暴落。社内は蜂の巣をつついたような騒ぎになったという。取締役会は、外部の専門家で構成される調査委員会を発足させ、坂本氏ら経営幹部や社員に対する聞き取り調査を始めた。
調査委員会は07年6月19日に調査結果を公表。それによると、坂本会長は1993年から2001年にかけて、親族の経営する会社(2006年にブックオフが吸収合併)を通じて、フランチャイズ加盟店に什器を納入した(株)丸善(現・丸善雄松堂(株))から合計7億4,200万円の手数料、いわゆる「リベート」を受け取っていたという。
手数料に応じて丸善に情報提供や販売協力を行っており「取引に直ちに違法性は認められないが、不透明さが残る」(同委員会)。また、04年12月と06年2月に合計2,206万円の不適切な売り上げの計上があったことも認定した。直営既存店の売上高を前年同月比増とするためで、「売上増を至上命令とする経営者の強い意思が、現場責任者に大きなプレッシャーをかけていた」という。
調査結果を受け、坂本氏は受け取っていた手数料の全額をブックオフに返還し、6月23日付で会長を引責辞任。ブックオフから去った。
「人生が終わるかもしれない」
大成功したブックオフから離れなければならなかったことは、坂本氏の起業家人生において最大の痛恨事であった。
坂本氏は後年、(株)ダイヤモンド社のウェブサイト『DIAMOND online』(18年3月19日付)に『「文春砲」に撃たれた坂本孝が、稲盛和夫に叱られた恐怖と感謝の45分』というタイトルの一文を寄稿した。
「私という人間は、まだまだ甘かったし、気がつかぬうちに再び驕りの縁にたっていたのだと思う」と回想している。
〈それは2007年5月のことで。私の秘書から緊急のメールが入ってきた。
「『週刊文春』に、ブックオフにおける架空売上とM社とのリベート処理に関する、坂本社長への内部告発記事が掲載されます。事実関係は・・・」
(中略)真実云々の前に今風にいえば”文春砲”が飛んできたのである。しかも、翌週、翌々週と3週連続で打たれた。「自分の人生は終わるかもしれない」と思ったほどだ。
内部告発であるから、告発者がいた。それが誰かはわかっていた〉(つづく)
【森村 和男】
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