2024年11月22日( 金 )

外国人人材の適正な雇用に向けて

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日本企業で外国人が働くためには、働き方や仕事の内容によって、まずは適切な在留資格を取得する必要があります。

入国規制の水際対策緩和

 政府は3月1日から、観光目的の渡航を除き、外国人の新規入国について水際対策の大幅緩和を行っている。留学生の入国を待ち望んでいた学校だけでなく、外国人人材の雇用を待ち望んでいた企業にとっても朗報となっています。

在留資格によって業務が違う点に留意

 外国人を雇用するには、在留資格に応じた適正な雇用を行う必要があります。まず日本企業が人材を外国人に求める場合、業務内容によって在留資格が異なり、各業務の目的に適した在留資格を取得する必要があります。外国人が日本で働くための在留資格、技人国・技能実習・特定技能を例に掲げます。

在留資格 技術・人文知識・国際業務(技人国)

 この在留資格で日本企業への就職を望む外国人は、とても多いといえます。これを取得する前提として、母国や日本の専門学校または大学で、専門分野の専門士や学位を取得している必要があります。

 就職先の業務を例に挙げると、以下のようなものがあります。
・技術では、高度な技術技能が求められる機械工学などの技術者、ITに精通したシステムエンジニアなど。
・人文知識では、学術的に専門的な研究者、法務に関わる弁護士補助業務、建築設計・設計監理・建築積算など。
・国際業務では、語学教師、翻訳、通訳など。

 ただし、企業がこれらの業務に従事させるために雇用する際の判断で重要な点は、卒業した専門学校または大学で専攻の履修科目と卒業時に取得している専門士や学位の内容が、就職先で従事する職務内容と明確に合致していることが必須になること。履修内容と職務内容に関連性がない業務と判断されたり、主たる業務よりも異なる従たる業務の単純作業に多くのウエートがかかっていると判断されたりすると、雇用は不許可となります。

在留資格 技能実習

 1993年に技能実習制度が創設され、旧外国人研修制度から、2009年には研修制度が廃止され、名称や制度内容、主旨に変更がありました。

 この制度は外国人の方に日本の高い技術を学ばせ、自国へ持ち帰って日本の技術移転を行い、母国の経済発展に役立てるという、いわゆる国際貢献が目的です。

 現在は83業種151作業において、技能実習生を企業が受け入れ、雇用できます。法に基づき技能実習生に、現地送り出し機関から送り出された人材の日本側窓口となる協同組合(監理団体)が作成した実習計画にある目的以外の業務をさせることはできません。

 法に則って、人手不足の解消を主たる目的として、技能実習生を雇用することもできません。

 海外各国の人材送り出し機関が開催する法に基づく6カ月間の各種研修を学び、修了してからでなければ、技能実習の在留資格は取得できないのです。この6カ月間の研修前には、現地での求人募集や応募者との面接など準備期間が必要となりますが、それにはおよそ1カ月間を要します。

 6カ月間の研修を修了し、在留資格を取得してから日本に入国後、採用予定の日本企業と雇用契約を結ぶ前にも、約1カ月間の法定研修を受講し修了しなければ、採用予定の企業と雇用契約を締結できません。つまり、現実的に技能実習生を雇用するためには約8カ月間が必要なのです。

在留資格 特定技能

 これは19年4月に新たに導入された在留資格で、技能実習生とは主旨が異なり、外国人を労働者として受け入れられる在留資格です。日本国内において人手不足が深刻化している14業種で、外国人の就労が解禁されたのです。

 この在留資格は「特定技能1号」(最長5年間)と「特定技能2号」(上限設定なし)の2種類があります。現段階で「特定技能2号」に移行できるのは、14業種中2業種で「建設業」と「造船・舶用工業」だけとなっています。今年中には実質14分野すべてが、ほぼ無期限で労働できる環境になるとみられています。

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【技能実習生】外国人人材の適切な雇用のために(前)

 特定技能制度は外国人と受け入れ企業が直接雇用契約を締結できますが、雇用に関すること以外の在留資格のサポートや生活に関することについては、登録支援機関が企業から業務委託を受けて、特定技能の外国人が安心して働けるようにします。

 技能実習制度は協同組合(監理団体)が、現地送り出し機関と受け入れ雇用企業、そして技能実習生の相談窓口となってサポート業務を行います。

水際対策のさらなる緩和

 15日、岸田首相は記者会見で21日にまん延防止等重点措置を全国的に解除すると発表しました。これと並行して、現在1日あたり7,000人とされている外国人の入国制限も、4月以降には1万人とする方針を述べています。

 このようななか、新たな変異株の感染例が海外で報告されていますが、水際対策の緩和措置が中断されないことを期待しています。

【岡本 弘一】

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