2024年11月22日( 金 )

ふくおかFGのネット銀行「みんなの銀行」を検証する

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ふくおかFGの将来をにらんだ営業姿勢

 【表1】は、日本のデジタルバンク(ネット銀行)の概況をまとめたもの。ネット銀行の金融機関コードは0033~0049で、「新たな形態」の銀行である。ただ、GMOあおぞらネット銀行の金融機関コードが0310となっているのは、あおぞら銀行の前身が日本債券信用銀行(旧・長期信用銀行)だったことによる。

 ネット銀行は4月1日現在で12社を数える。国内初のネット銀行はPayPay銀行。同行の前身のジャパンネット銀行の設立は2000年9月19日。営業開始は同年10月12日で、21年余りの歴史がある。

 住信SBIネット銀行の設立は1986年6月3日でPayPay銀行よりも古いが、前身の住信オフィスサービス(株)から業態変更し、住信SBIネット銀行となった。ネット銀行としての営業開始は07年9月24日。預金残高はネット銀行首位(約6兆2,938億円、21年3月31日現在)となっている。

 GMOあおぞらネット銀行の設立も1994年2月28日でPayPay銀行よりも古いが、前身のあおぞら信託銀行から業態変更し、18年6月に社名を現行に変更。ネット銀行としての営業開始は同年7月17日である。

 2000年1月14日に設立された楽天銀行の口座数は、ネット銀行首位(約1,052万口座、21年3月31日現在)となっている。

 ネット銀行12社のうち非上場が11社。上場はセブン銀行(東証プライム)だけとなっているが、楽天銀行は上場を準備中であり、上場企業は2社となる。

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 最新のネット銀行は、ふくおかFG傘下の「みんなの銀行」。金融機関コードは0043。次に「UI銀行」が0044。「みんなの銀行」の設立は2019年8月15日だが、インターネット専業銀行として営業を開始したのは21年5月28日で、まだ1年弱しか経っていない。ただ、地銀傘下のネット銀行は同行だけであり、ふくおかFGの将来を見据えた営業姿勢が目を引く。

<みんなの銀行の概要>
・商号:(株)みんなの銀行
・設立:2019年8月15日
・所在地:福岡市中央区西中洲6-27
・代表:横田浩二取締役会長、永吉健一取締役頭取
・資本金:165億円(資本剰余金含む)
・株主:(株)ふくおかフィナンシャルグループ(100%子会社)

<みんなの銀行の口座について>
1.普通預金口座開設の条件
・個人で15歳以上、日本国籍、国内居住者。
・iOS13.0以降、またはAndroid8.0以降を搭載したスマートフォンを所有していること。
 (パソコンからの利用は不可能。また、タブレットからの利用は動作保証外。)
・Walletは普通預金。口座開設にあたってキャッシュカードは発行されない。口座の入出金はセブン銀行のATMにおいてスマートフォンを使って行う。
・24時間365日口座開設が可能。
・EC(電子商取引)決済は年会費無料のバーチャルなJCBデビットカードが付帯している。対面決済はApple Payなどの非接触で行える。
・EC等代行業者と提携したアグリゲーションサービスで、ほかの銀行口座、クレジットカード、電子マネー、ハウスカードの取引明細を記録できる。
・貯蓄預金口座(Saving)を併設すると仮想口座=目的別勘定(Box)を設けて、目的別のバーチャルな口座を最大20個設置でき、Box・Wallet間でフリックによって振り替えが可能。

2.プレミアムサービス
月600円の追加サービスで、以下の特典がある。
・出金手数料(110円)が月15回まで無料
・他行振込手数料(220円)が月10回まで無料
・デビットカードのキャッシュバック率上乗せ(0.2%→1.0%)
・Walletの残高不足時の融資サービス「Cover」の申し込みが可能
プレミアムサービスの利用料金は口座からの引き落としではなく、App Store、Google Playのサブスクリプションによる支払いとなる。

口座数は昨年12月上旬に12万件

 【表2】【表3】の通り、みんなの銀行の経営は厳しい状況にあるのがわかる。九州・山口には4金融グループがある。ふくおかFG傘下4行(福岡銀行・熊本銀行・十八親和銀行・みんなの銀行)、西日本FH傘下2行(西日本シティ銀行・長崎銀行)、九州FG傘下2行(肥後銀行・鹿児島銀行)、山口FG傘下3行(山口銀行・もみじ銀行・北九州銀行)である。ふくおかFGは「みんなの銀行」を傘下行に加え、4行となっている。

 みんなの銀行の口座数は昨年12月上旬で12万件に達しているという。幼少期からインターネットに親しんできたデジタルネイティブ世代が7割を占め、福岡や東京など都市圏を中心にすべての都道府県に住む人が口座を開設。現在は預金・為替と振り込みの機能しかないが、今年7月~8月頃にローン機能の付加を予定しており、システムの外部販売を検討しているという。

 もし、九州・山口でネット銀行を新設する金融グループが出なければ、ふくおかFGがシステムの外部販売により、独占的な地位を確保するとみられている。

【表1】ネット銀行(新たな形態の銀行)について
【表1】ネット銀行(新たな形態の銀行)について
【表2】みんなの銀行の貸借対照表
【表2】みんなの銀行の貸借対照表
【表3】みんなの銀行の損益計算書
【表3】みんなの銀行の損益計算書

【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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