麻生が大豊建設を買収　ゼネコン再編に参戦（前）

麻生が「ホワイトナイト」（白馬の騎士）に

    中堅ゼネコンの大豊建設（株）（東証プライム上場）は5月25日、臨時株主総会を開き、セメント事業や医療関連事業を手がける（株）麻生（福岡県飯塚市、非上場）による第三者割当増資を決議し、麻生の傘下に入ることを決議した。

　大豊建設は年度末を1週間後に控えた3月24日、麻生の傘下に入ると発表。筆頭株主である旧村上ファンド系の「物言う株主」と対立していた大豊建設に、麻生が「ホワイトナイト」（白馬の騎士）として救済の手を差し伸べた。

　麻生を引受先とする第三者割当増資で、新株を850万株、1株4,750円で割り当て、7月19日付で403億円を調達する。麻生の持ち株比率は50.74％となる。

　大豊建設は調達資金をもとに、自社株885万株を1株4,730円、総額420億円でTOBを実施して買い付けて消却する。

　22年5月18日時点で、発行済み株式の42.43％を保有している村上世彰氏が関わるアクティビスト（物いう株主）は買い付けに応じる。旧村上ファンド系の（株）シティインデックスイレブンス（東京・渋谷区）が37.29％、（株）南青山不動産（同）が1.77％。（株）エスグランドコーポレーション（同）が3.36％保有している。

　これにより大豊建設と旧村上ファンド系との対立は解消に向かう。

　大豊建設が6月28日に開催する定時株主総会で、麻生社長の麻生巌氏が社外取締役に就任する。

村上ファンドの圧力で、麻生入り

　大豊建設は1949年3月の設立。旧満州国の大豊満ダムの建設に参画した技術陣を中心に、満州、台湾、朝鮮などの外地で活躍した土木・建築技術者を糾合して発足した。

　同社は2003年10月に、負債総額2,153億円を抱えて民事再生法を申請した（株）森本組（大阪市）のスポンサーとなり、100％子会社に組み入れた。

　大豊建設をめぐっては、旧村上ファンド系のシティインデックスが20年10月に6.15％を保有して登場。以降、買い増しを進め、共同保有分を含めて42.43％と圧倒的な株式を保有するまでになっていた。

　21年12月、村上世彰氏がマネジメント・バイアウト（MBO）による上場廃止や上場維持する場合の純資産圧縮による自己資本当期純利益率の向上などを大豊建設に促した。

　株主還元策などで見解の相違が顕著になったことで、この提案を大豊建設は採用しないと決める一方、21年9月にはすでに麻生グループと資本提携について検討を始めていた。

　村上ファンド系からの攻勢に対抗するため、大豊建設は麻生グループの傘下に入ることを決めた。

「華麗なる一族」の御曹司は投資家

　麻生家は華麗なる一族である。1872（明治5）年に麻生太吉氏が福岡県の筑豊で炭鉱事業に踏み出したことに始まる。「炭鉱王」といわれた麻生家に大きな転機が訪れたのが1936（昭和11）年。3代目の太賀吉氏の欧州視察だった。太賀吉氏は、白洲次郎氏の紹介で当時駐英大使の吉田茂氏（のちの首相）と知己を得て、その次女・和子さんと結婚する。

　太賀吉氏と和子さんの三女・信子さんが、三笠宮寛仁殿下と結婚。麻生家は皇族との閨閥を結ぶことになる。長男が元首相・現自民党副総裁の麻生太郎氏、三男が(株)麻生会長・麻生泰氏である。

　麻生巌氏は泰氏の長男で、74年7月生まれの47歳。慶應義塾大学経済学部を卒業、ケンブリッジ大学に留学した。家業である麻生セメント（株）（現・麻生）に入社し、2010年に父・泰氏の後を継いで（株）麻生の社長に就いた。

　麻生グループのホームページによると、麻生グループは飯塚病院など医療関連事業や九州最大の専門学校グループ、建設コンサルティング事業を手広く行い、グループ社数102社、グループ総売上高5,139億円、グループ社員数1万4,548人（21年3月期末時点）を数える。

　麻生家の御曹司は投資が大好きだ。Net-IB News（20年12月2日～5日付）に、「麻生グループの御曹司　麻生巌氏は投資家・孫正義氏になれるか～日本の台所・豊洲市場の東都水産に友好的TOBを実施」を寄稿した。

　その続編だ。何でも食い付く麻生だが、なぜ建設業界なのか。

（つづく）

【森村　和男】

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