大王製紙、「ギャンブル狂」御曹司の復讐!(後)
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『熔ける 再び そして会社も失った』(幻冬舎)の広告が7月1日付の新聞に大きく掲載された。著者は、カジノに子会社から借りた総額106億8,000万円の資金を費やし、会社法違反(特別背任)の罪で2013年2月に懲役4年の実刑判決が確定、3年超服役した大王製紙前会長・井川意高氏。広告には、「ギャンブルよりも血がたぎる、現会長佐光一派による井川家排除のクーデターが実行されていた」とおどろおどろしい文字が躍る。復讐するために出版したというのである。
「井川家排除」のクーデターを告発する”暴露本”
創業家御曹司の意高氏が、今頃になって”暴露本”出版に踏み切った理由は『熔ける 再び』に書かれている。佐光正義前会長ら現大王製紙経営陣らによる”井川家排除”のクーデター劇を活字に残しておこうと思ったためだという。
カジノで使い込みによって失脚した意高氏の後釜として、社長に就いた佐光氏は、創業家一族の離間工作を働いて高雄氏、意高氏、弟の高博氏の3人を孤立させた。
〈父(高雄)と次男(尚武)が死んだのち、井川家の最長老は三男・俊高になる。俊高は「我が世の春がきた」と思い上がったのだろう。(略)ある日俊高から直接電話がかかってきた。俊高は電話口でこう言ったそうだ。
「ワシは伊勢吉さん(祖父)と高雄さん(父)2人に仕えてきたけれども、今回だけは伊勢吉さんにつくのだ。高雄さんにはつかない」
俊高が何を言わんとしたのか。大王創業者である伊勢吉の正統な系譜を継ぐのは、長男・高雄ではない。「伊勢吉-高雄」ラインではなく、「伊勢吉-俊高」ラインにつけとでも言いたかったのだろう〉
〈まさか佐光が自分に牙を剥き、兄弟たちが反目して佐光側に寝返るとは、父は夢にも思わなかった。佐光と三男・俊高が裏で手を握り、残りの兄弟を全員佐光派としてまとめてしまったのだ。高雄が実権を失いかけていると見るや、五男・英高は佐光派に寝返った。
「オレたちをずっと押さえつけていた兄貴をここで排除すれば、オレたちは今後好き勝手にできる」と考えたのだろう。〉
父が遺した「佐光とは共死にしても構わない」のメモ
父の遺品を母が整理していると「佐光とは共死にしても構わない」というメモが見つかった。父の無念を晴らすために、暴露本を書いた。
〈大王製紙としては、1日も早く創業家と手を切りたい。井川家がもっている株式を、早いところ全部買い取りたい。なぜなら、ほとんどの大王製紙関係会社において、井川家は大株主であり、大王製紙本体から井川家をパージしたところ、主要の関係会社が連結対象から外れてしまい、上場廃止もあり得るようになったからだ。
ところが、高雄が「佐光とは取引しない」と言った。困り果てた佐光が岸本氏【北越紀州製紙(現・北越コーポレーション)の岸本哲夫社長】に泣きついたのだ。
結果的に、創業家がもっていた株式は相場の2.5倍もの高値で売却に成功した。本来であれば、140億円でしか売れなかった株式を、トータルで440億円の売却金額を得たのだ。〉
〈大王製紙から井川家を排除し、自らの地位を盤石とするために、佐光は300億円も無駄金を上乗せして会社に損害を与えた。大王製紙の一般株主の資産を、300億円もキャッシュアウトさせ、溶かしたのだ。「他人のカネ300億円で買った社長の座」は、さぞかし温かく心地よいことであろう。これこそ特別背任ではないか。しかも、私の金額の3倍である。有罪とすれば懲役12年だ。〉
井川高雄=意高氏の創業家は、大王製紙を失ったが、400億円のキャッシュを手にした。カジノでつくった借金を支払い、破滅どころか、収支決算すれば大幅黒字だ。出所後に3,000万円をもって韓国のカジノでバカラに興じることができた。”ギャンブル狂”の意高氏に、創業家が大王製紙を失ったのは、自ら蒔いた種という自覚はあるのだろうか。
(了)
【森村 和男】
自身、カジノ(マカオ)運営の経験を有し、ギャンブラーの心理にも通じた経営者Aに井高氏について聞いたところ、ギャンブルについて、「自身の物差しで測らないことが大事」とする。ギャンブルについて、のめり込むのは「現実逃避」、娯楽であり日常生活に支障をきたさない範囲の資金と時間で遊ぶべきというのが一般的な見方であろう。
しかし、Aはギャンブルとは「金銭や品物を賭けて勝負を争う遊戯」であり、勝って元手を倍にするか、負けて元手を失うかという性質の行為であることを正確に理解すべきとしたうえで、人生、とくにビジネスも選択と勝負の連続であり、ギャンブルにのめり込んでいる人は、ギャンブルを自身の仕事として行っているという。その点において、井川氏を根っからの、筋金入りのギャンブラーと評する。
井川氏の行為で問題となったのは、自社の資金をギャンブルに使いこんだことだ。同様に家庭のお金を勝手に持ち出し、注ぎ込んで失ってしまった人もいるだろう。内々の問題で済ますケースもあるだろう。しかし、井川氏の場合は損失が巨額で悪質であるとして、創業家出身でありながら自社から刑事告訴された。
【データ・マックス編集部】
法人名
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