【福岡IR特別連載96】長崎IRの完全崩壊、お人好しの同県行政・議会は孤立
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昨日掲載号(【福岡IR特別連載94】長崎IR、佐世保市長発言が800億円以上の"熨斗"までつけた)、に続けて、ハウステンボス(以下、HTB売却について解説をする。
まず、先日の朝長則男佐世保市長のNHKインタビューでの「ハウステンボスの所有者が代わっても、長崎IRに一切影響はない」という発言について再確認する。この発言内容を予想はしていたものの、記者の質問に対して“瞬時に”あのように返答するとは予想外で、驚きを隠せなかった。同氏も慌てて、頭が回らなかったのだろう。それゆえ、「愚かで、お人好し」な振る舞いだと揶揄・批判している。
その発言が結果として、HTB売却先の中華系企業に対してお上(行政の首長)がお墨付きを与えたようなものだと解説した。事前に聞いていなかった出来事が突然起こり、慌てて答えたものだが、これが朝長市長の"本音"なのだ。馬鹿正直な人だ。おそらく、近日中に同様の趣旨の発言が長崎県行政、知事およびその関係者から出て来るだろう。
すでに述べたように、この「ハウステンボス売却、800億円超...」に関する報道は、前述の朝長市長はじめ、長崎県知事や行政にとっても“青天の霹靂"であり、彼らだけが”蚊帳の外"に置かれたまま突然発生した出来事だ。そのために各地行政の当事者はひどく狼狽している。
もっとも、彼らはいまなお理解していないようだ。「寝首を掻かれた上に、熨斗まで付け」たとなると、今後、目的が変わり、悪循環に陥っていくものと考えられる。朝長市長の“長崎IRには影響しない"発言で明確になったように、彼らは自身の地位の保全に終始し、執着しているにすぎないためだ。予想外の出来事に慌てている姿は、現在のこの国の組織人の文化であり、病巣である。
1人ぼっちの長崎県行政で、中華系と戦える筈もない
今回のHTB売却問題は、長崎IRの事実上の崩壊を意味する。一番のパートナーであったHIS澤田氏から、”寝首を掻かれ裏切られた"のであり、彼らは突然のことと予想もできなかった。繰り返しになるが、「背に腹はかえられない」のが通常のビジネスであり、信義上の問題はあっても、澤田氏を責めることはできない。以前から指摘していたように、お粗末なのは察知能力のない長崎県知事および行政、佐世保市長および行政だ。ネズミでも地震が来る前にはそれを敏感に察知して逃げるものだが・・・。
HISはHTBの株主である九州電力、西部ガス、JR九州などに対して、売却の意向を事前に知らせる必要がある。それは松尾新吾氏(九電)や石原進(JR九州)氏個人の問題ではない、福岡財界の一部の現役幹部は、建前は別として、本音では安堵して喜んでいるものと推測する。
福岡財界の各社は、今回の地元『西日本新聞』の報道により長崎IRとの"つながり"がなくなることで、すでに「完全に切れている」状態だろう。中華系企業との取引は、彼らには経験がなく、関心もないであろうから、首を突っ込むつもりもないだろう。コンプライアンス重視、ガバナンス不全症候群のサラリーマン組織の幹部なのだから。
HISはHTBを早々に売却することで、"頼みの綱"の福岡財界は株主ではなくなってしまう。松尾氏、石原氏ら後期高齢者個人には一切関係がない話となり、九州経済連合会および九州IR推進協議会の倉富会長以下の組織人も、同様の姿勢に豹変するだろう。今回の報道ですでに答えは出ている。
「1人ぼっちになった長崎県行政」はこの状態で何ができるのか。相手は強かな中華系企業PAG(本社は香港)である。土地を転がし、その転売益で事業を営む組織だ。表向きは別として、前述の福岡財界の関係者が今後長崎IRをバックアップすることは皆無だろう。もし、期待するというのであれば、「お人好し」極まりない。
HTB売却の報道を受け、来年に統一地方選挙を迎える長崎県議会および佐世保市議会において激震が走ったものと推測する。今回の報道で、これまで長崎IRに賛成していた人も、すでに"豹変"し、手のひらを返しているだろう。政治家は、このような変化を敏感に察知して素早く動く人たちであり、その能力だけは高い。おそらく、県議会も市議会も一挙に変身し、同知事、同市長に反旗を翻すことになるだろう。これが"人の世の常"である。
大石知事と朝長市長の政治生命が「風前の灯」と解説したのは、それぞれ行政内部においてIR誘致事業の崩壊が始まるためだ。これが長崎IRは事実上崩壊していると解説する所以だ。
大石知事には、辛く厳しい決断が迫られている。『読売新聞』の特ダネであるHISの担当者コメントによると、来月に記者会見を行い、正式にHTB売却案件の結果を報告するということだ。行政の首長に残された時間は限られている。「寝首を掻かれても、裏切られても、お人好しと言われても」決断ができない長崎県行政では、県民、市民からの信頼性は得られないことを、肝に銘じるべき時がきたのだ。
【青木 義彦】
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