2024年11月22日( 金 )

SECCON2015に初の学生限定枠

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人材対策は喫緊の重要課題である

seccon 6月9日、秋葉原UDX4Fの会議室において、特定非営利活動法人ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は今年度の「SECCON2015」開催に先立ち記者発表を行った。

 挨拶に立ったJNSA会長の田中英彦氏は、毎日のようにサイバー関係のニュースが新聞を賑わしている現状、さらにIoT(Internet of Things)化等によってその状況が増々加速していく可能性があることを指摘、「社会、企業、組織に対するセキュリティの対策について、技術は勿論のこと人材対策も喫緊の重要課題になっている」と述べた。さらに「昨年度は、世界58カ国、延べ4,364人が参加し大変賑々しい大会であったので、今年もぜひ活発な動きが展開されることを期待したい」と続け、後援団体、協賛企業にも引き続きの支援を呼びかけた。

学生に“ワンチャン”の大朗報!

 SECCON実行委員会の竹迫良範実行委員長からは、今年度の開催スケジュールや新たな取り組みが説明された。それによると今年度の最大の特徴の1つは「学生限定」枠を設けたことにある。昨年の「SECCON2014」のCTF決勝戦のTV報道後、事務局には「ぜひ、参加したい。入賞、優勝するためにはどのような勉強をすればよいのか」という学生の問い合わせが複数来ていた。全国の学生にとっては大きな朗報になったと言える。

公安調査庁と外務省が新しく後援

 田中JNSA会長の挨拶に続き、後援団体関係者から一言ずつ挨拶があった。内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室、内閣官房 内閣サイバーセキュリティセンター、警察庁、総務省、公安調査庁、外務省、文部科学省、国立研究開発法人情報通信研究機構の関係者が参列した。
 このうち、公安調査庁と外務省は今回から新たに後援を決めている。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、後援と同時に、昨年海外からの参加者に、まるでアニメの「攻殻機動隊」のようだと評判の高かったサイバー攻防戦をリアルタイムで可視化するプログラム「NIRVANA改」を提供している。

サイバー甲子園とCSIRT演習など

 「SECCON2015」の決勝戦までの行程は、5つの地方大会(①~⑤)、連携大会(ASEAN10カ国と台湾)、オンライン予選(⑥)でなり、以下のスケジュールで開催されることが決まった。⑦と⑧の決勝大会は東京電機大学で開催、連携大会の詳細は現時点では未定である。

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 1.福島大会、九州大会、決勝大会(intercollege)は「学生限定」の大会となっている。

 2.「サイバー甲子園」(福島大会)では、18歳以下の学生が20名、予選で選抜され、チームではなく個人で優勝を争う。会場の会津大学で、10数年来開催されている「パソコン甲子園」と同日程でおこなう。優勝者は決勝大会(intercollege)に招待される。

 3.横浜大会(CEDEC CHALLENGE)ではコンピュータ技術に加えてプレゼンテーション技術も評価対象とする。今セキュリティの脅威を専門家でない人(企業幹部など)にわかりやすく説明できる能力が会社、団体などで求められている。

 4.大阪大会では「CSIRT」演習を行う。問題は民間企業でCSIRT構築に実際に携わる人も加わって作成、民間企業の現場で必要なセキュリティ人材の発掘を目指す。

 この他に、SECCONに参加したいがその手順、内容がわからない初心者にたいする勉強会を会期期間中、全国8カ所(福岡、札幌、東京、長野、熊本、滋賀、奈良、大阪)で開催する。

大人が見本となり正しい倫理観に導く

 竹迫良範SECCON実行委員長は、今回の「学生限定」枠を設けたことに対し2つの理由を挙げている。1つは大会に出場する学生をもっと増やしたい為である。昨年度は国際大会を開催、世界トップのチームが来て、一緒に対決する貴重な体験ができた。しかし、自分の実力が足りないと思い尻込みしてもらっても困る。全国の多くの学生に積極果敢に「SECCON2015」にチャレンジして欲しいと語った。

 2つ目は、高いハッキング能力を持った学生に将来のキャリアパスを早くからイメージさせたい為である。今、本格的にセキュリティを勉強しようと考えた場合、大学院レベルではその専門を勉強できる学校は複数あるが、大学、高校レベルではほとんどないのが現状である。今回「サイバー甲子園」を実施する会津大学では10数年にわたる「パソコン甲子園」開催の実績で全国の優秀なプログラミング人材の獲得に成功している。

 最後に、竹迫実行委員長は、高度なセキュリティ技術が、空手や柔道の有段者と同様に、条件が整えば簡単に他人を傷つけることができるものであること、若者がアンダーグランドな思想を技術と一緒に学んでしまう可能性があることを危惧し、大人が見本となって正しい倫理観に導いていくことの必要性を説いた。

【金木 亮憲】

【注】SECCON:情報セキュリティをテーマに多様な競技を開催する情報セキュリティコンテストイベント。競技には攻撃・防御両者の視点を含むセキュリティの総合力を試すハッキングコンテスト「CTF (Capture the Flag)」などがある。

【注】CSIRT:コンピュータやネットワーク上で何らかの問題(主にセキュリティ上の問題)が起きていないかどうか監視すると共に、万が一問題が発生した場合にその原因解析や影響範囲の調査を行ったりする組織の総称。今、民間企業等でCSIRT結成の動きが進んでいる。

 

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