AOKI絶体絶命の危機 五輪汚職で創業者青木前会長逮捕の衝撃(中)
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東京五輪・パラリンピック組織委員会元理事の資金受領事件で、紳士服大手の(株)AOKIホールディングス(神奈川県横浜市)の青木拡憲・前会長が東京地検特捜部に贈賄容疑で逮捕された、青木氏はスーツを売り歩く行商から身を起こし、グループ全体で1,500億円以上を売り上げる業界2位の大企業を築いた立志伝中の人物。大黒柱の逮捕で、AOKIは絶体絶命の危機に陥った。
1億円でウールを落札した相場師
青木氏は相場師の顔をもつ。
〈スーツの素材となるウールで世界最高品質のものがあると聞き、1989年、オーストラリアに飛んだ。南部の都市、メルボルンから車で5時間半の「カーディニア牧場」。(中略)毛を触ってみると、絹のようになめらかで柔らかい。この「ウルトラファインウール」に私は一目ぼれし、早速、入札に参加して競り落とした〉
記念としてこの年、すべてウルトラファインだけで仕上げたスーツを1着約150万円で販売した。相場師の本領を発揮するのは、それからだ。
〈95年、強力なライバルが現れた。イタリアの有名生地メーカーだ。入札が進むにつれて価格はつり上がっていく。私は日本にいて、車のなかから、電話で現地の担当者に交渉を指示したことを覚えている。
興奮していた。一歩も引く気はなかった。(中略)最終的に当社が13.8マイクロメートルの最上級品を約1億円で落札した。喜んでいいのだろう。このときの価格は世界記録としてギネスに認められ、いまだ破られていない。
とはいえ、落札したウールを全量使っても、わずか20着分しかつくれない。当時の年商は340億円ほど。多少の赤字はやむなしと割り切った〉安倍晋三首相に根回しか
欲しいものを手に入れるために、リスクをいとわないのが相場師だ。
五輪事業参画は、1964年の東京五輪を見に行って以来、「青木前会長の悲願」とされた。五輪スポンサーは「1業種1社」が原則。五輪スポンサー取りに動く。相場師・青木前会長の決め手は人脈だ。東京五輪開催は2013年に正式決定した。日刊ゲンダイDIGITAL(8月22日付)は、東京五輪を誘致した安倍晋三元首相と青木拡憲前会長は、ゴルフや会食を重ねる特別な関係だったと報じた。
〈首相動静を検索すると、安倍氏と青木容疑者は、2013~17年の5年間に8回、会っている。最後に会ったのは、17年4月。東京・八王子のゴルフ場「八王子カントリークラブ」で一緒にラウンドしている〉
興味深いことに、AOKIが東京五輪の公式スポンサーに就くことが内定した17年以降、一度も会っていない。青木前会長は、安倍首相の"オトモダチ"となるほど、政界に人脈を築いていた。
高橋容疑者の働きかけで、スポンサー料半額に減額か
事件の構図は、五輪のスポンサーになることを望んだAOKIが、職務権限のある高橋容疑者にワイロを贈ったというもの。
「スポーツビジネス界のドン」と呼ばれる、元(株)電通専務で、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会理事(当時)の高橋治之容疑者とAOKIの青木容疑者は08年ごろ、AOKIホールディングス(HD)がゴルフの国内大会のスポンサーとなるのを元理事が後押ししたことで懇意になったとされる。
各社の報道によると、18年10月、AOKIは正式に組織委とスポンサー契約を結んだ。19年夏に組織委の承認を受けて公式ライセンススーツを販売し、3万着以上を売り上げた。また、日本オリンピック委員会との契約に基づき日本選手団の公式制服も制作した。
電通が募集した国内スポンサーには、協賛金額などに応じて3ランクあり、それぞれ組織委と契約を結ぶ。上から150億円、60億円、15億円がスポンサーの相場だ。
AOKIなどが契約したオフィシャルサポーターは15億円。なのに、高橋容疑者の働きかけで7億5,000万円に減額された疑いがもたれている。”鼻薬”の効果だろうか。ルール通り15億円支払ったスポンサーからはブーイングが上がる可能性がある。
(つづく)
【森村 和男】
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