2024年07月16日( 火 )

【福岡IR特別連載104】長崎IR、日米経済安全保障と重要土地利用規制法

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 筆者が前号で(【福岡IR特別連載103】長崎IR、首長の日米経済安保無視の愚かな発言)長崎IRの「ハウステンボス売却転売問題の行政責任」を問い、重ねて解説しているにもかかわらず、長崎県の大石知事と佐世保市の朝長市長は、自らの責任回避を最優先にして、これに全力を注いでいる。まことに嘆かわしく、何と愚かな姿だろうか。

 彼らは、地元の政治・行政の責任者だ。米中覇権争いの状況下、もし「台湾有事」が起こった際は、当該地である佐世保市が日米安全保障上、我が国の海防における大変重要な軍事基地であること、また、本件IRのパッケージであるハウステンボス敷地の塀を隔てた隣に米軍基地があることなどは“百も承知"のうえで、「所有者が中国企業にかわっても一切影響はない」などと、とんでもない発言をしているのだ。

長崎県庁 イメージ    前回、過去の自らの行政機関の公開入札の失敗(昨年、中華系カジノ企業2社を恣意的に外した件)などを理解していながら、責任回避に終始し、取り繕って公に「影響がない」と言い放っている。まったくひどい話だ。

 さらに、彼らはマスコミが報道するまで、ハウステンボスの売却・転売話について、一切情報を得ておらず、本当に知らなかったのである。

 当該地IRの管轄行政は完全にHIS・澤田氏に「寝首をかかれた」のだ。

 最近の「旧統一教会問題」における一部の政治家が何事においても「それは知らなかった」と言うのと根っ子は同じで、無責任な偽善者たちである。

 今回の新たな所有者「PAG」を含めた中国の民間企業のなかで、中国・習近平政権に抗うことができる者など誰一人居ないのである。従って、長崎IRは「ファーウェイ問題」と同じで"日米経済安全保障"に抵触する、中国最大のEC事業者・アリババなど、同様の問題は枚挙にいとまがない。

 県知事に市長、県議会に市議会は、「蚊帳の外」に置かれていたことに狼狽し、今後は、何とか国の判断を仰ぎ、責任転嫁し、自らは決断せず、保身を図っているに過ぎないのである。こんな政治家たちが居ること事態、"平和ボケ"であり、お粗末過ぎて、長崎県民にとっては悲しく嘆かわしい話である。

中国企業を対象に立法、施行される重要土地利用規制法

 重要土地利用規制法(重要土地等調査法)は2021年6月に可決・成立した。その施行日は22年9月、すなわち今月である。

 従って、筆者は今回のハウステンボス売却・転売問題は、これを考慮した「駆け込み取引」だと前号で非難・指摘している。

 場合によっては、中国企業と習近平政権の練りに練られた戦略かもしれない。「平和ボケ」の我が国国民には思いもつかぬことである。

 しかし、リスク回避とは、最悪のケースを想定し、対処することだ。同法は、我が国の防衛施設関連等の機能を阻害する周辺土地等の利用を防止する為、外国資本(習近平政権の中国が対象)による不適切な目的により、我が国国土の取得、または利用を事前に調査し、それを規制し、可能な限りそのリスクを軽減するために実施されるものである。従って、同法施行後、全国の防衛関係施設周辺を中心に約600カ所以上の場所を速やかに規制対象に指定し「特別注視」する。

 当然、我が国国防の要である佐世保の米国海軍基地、海上自衛隊基地、それに準じる海上保安庁基地などは、その対象となり同法が適用される。

 とくに、同法が最優先の危機管理としているのは「インテリジェンス」(諜報活動)であり、平たくいうと「スパイ活動防止」である。世界的に遅れているこの国の脆弱な部分に関する緊急的な施行なのだ。

 大石県知事と朝長市長は、これらについてあり得ないとするならば、何らかの根拠を示すことができるのか。「長崎IRに一切の影響はない」とは何を根拠に発言しているのか。九州電力をはじめ、ハウステンボスの既存株主である福岡七社会のほぼすべてが撤退するではないか。

 両首長共に、HIS澤田氏に"蚊帳の外"に置かれて、本件長崎IRプロジェクトのパッケージ「ハウステンボス売却・転売」話は、初めてマスコミから聞いたと公言している。

 彼らの頭には、我が国国防の要である"インテリジェンス防衛"などは一切ないし、それらについての能力もないと断言する。すでに、長崎IRは、事実上崩壊したのだ。本当にお粗末極まりない。

 近年、中国・習近平政権下の中国企業は、北は北海道から南は沖縄に至るまでの全国各地で、土地および建物・施設、企業等を買収しまくっている。従って、ここにきて、遅ればせながらの、中国対象の我が国国防のための土地利用規制である。

 香港はすでに中国の一部であり、共産党政権の管轄下にある。中国の民間企業は、中国共産党政権に抗うことなど絶対にできない。むしろ、中国政府の手先となる機関かもしれないのである。

 現在、日本の政治家たちの"平和ボケ"は極まっている。ハウステンボス買収だけでもSNS上では大変な騒ぎになっている。各社マスコミも良く調べて本件についての報道をすべきだ。すでに、今回の買収劇に対しての危機感が強い国会議員の一部は、自身のブログなどで今回の問題を発信し始めている。

 大石知事に朝長市長は、危機感をもち、速やかに"長崎IRの中断"を決断すべきだ。重ねて解説するが、毎日テレビで報道されている現在の"旧統一教会と政治家問題"もやがて落ち着き、次はこの香港本社の中華系投資企業「PAG」によるハウステンボス買収という政治問題が大きくクローズアップされることになるだろう。

【青木 義彦】

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