LNGの価格高騰と需要ひっ迫の原因は?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏価格高騰続くLNG
2021年に入り、世界的にLNG価格が上昇を続けた。数年前までLNGの価格は非常に安かった。ところが、昨年夏以降、アジアの市場では、LNG価格が急激に上がり始め、昨年10月には一昨年の同時期と比べ、10倍超の水準にまで達していた。LNGは、その後も価格高騰を続けた。昨年8月のアジアのLNGスポット価格は、MMBtu(英国熱量単位)あたり20ドルを下回っていたが、今年8月には50.628ドルを記録するまでになった。
問題は今回の価格上昇が一時的なものではなく、アジアの需要増加によって今後も続きそうだということだ。アジアの需要は25年に3億3,900万トン、2030年には4億5,300万トンになると予測されている。
韓国でもLNGの大幅不足が予測されている
韓国ではどのような対策が講じられているのだろうか。先月行われた発表によると、韓国ガス公社のLNG備蓄量は、総貯蔵容量である557万トンの25%に過ぎない137万トンだという。これは今年の冬場に必要な量の10日分にしかならない。専門家は「このままだと、LNG不足によってブラックアウトが発生する可能性も高い」と警鐘を鳴らしている。
少なくとも追加で1,000万トンの天然ガスが確保できないと、今年の冬はエネルギー不足で大変なことになり得ると、韓国ガス公社の関係者は語る。実際今年の上半期に国内に導入されたLNGの量は、2,278万トンを記録した。これは昨年上半期の導入量である2,314万トンよりも少ない。この事実は、LNG需要が確実に伸びているなか、お金さえあればLNGを確保できるような状況ではないことを物語っている。
韓国ガス公社は、今年の当初計画より957万トン、すなわち1,000万トン近くを追加確保しようとしているが、価格高騰で予断を許さない状況だ。もし追加のLNGが確保できなくなった場合、来年3月頃に約795万トンのLNGが不足し、寒い冬になりそうだ。例年の需要で考えると、追加のLNG確保に失敗した場合、冬場の1カ月半くらいは、寒さを我慢しなければならない。
ロシアへの経済制裁がヨーロッパのガス供給減少につながり、ヨーロッパだけでなく、アジアも巻き込んだ深刻な「エネルギー地殻変動」が起きようとしている。物価が上がった場合は、消費を抑制するなど、それなりの対処方法もあるが、エネルギーが不足すると、日常生活だけでなく、ビジネスにも影響を与える。LNG価格の高騰は電気料金の値上げ、生産コストの増加など、様々なかたちで経済活動に深刻な影響を与える。日本と韓国のように、エネルギー資源の乏しい国にとって、試練の時期が到来しつつある。政府には長期的な観点でエネルギー市場の動向を見極め、現実に即した戦略を樹立することが求められている。エネルギー政策の優劣が国家の興亡を左右すると言っても過言ではない時代を私たちは生きているのである。
(了)
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