「米中半導体戦争」の行方は?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏「産業のコメ」ともいわれる半導体は、現代生活に必要不可欠なものとなっている。自動車製造コストの半分は半導体で制御される電装で占められているし、電気自動車ともなると、その割合はもっと高く、7割近くになる。さらに、人工知能、ドローン、ミサイルなども、「頭脳」に当たる半導体の性能によって優劣が決まるため、「第4次産業革命」が進めば進むほど、半導体の重要性が増していくことは容易に想像できる。
世界半導体市場統計(WSTS)は、世界の半導体の市場規模は、昨年の5,559億ドルから、今年は6,135億ドルに成長する見通しだとしている。半導体の設備投資も、昨年より24%増加の1,904億ドルを記録すると予想されている。
国力を図る物差しとして、かつては領土の大きさ、軍事力、通貨、貿易量などが使われたが、現在は半導体製造技術の有無が、その国の国力を測る尺度の1つとなった。
近年は半導体の供給が不足する現象が発生し、半導体の安定的な確保がいかに大事であるかに各国が気づき始めた。これからは半導体を制覇する国家が、経済技術と軍事の覇権競争において優位に立つことは間違いなさそうだ。そうした状況下、米中の対立はますますエスカレートし、半導体の覇権をめぐって、両国が激しくぶつかっている。
米国は半導体分野で中国がこれ以上成長できないようにけん制すると同時に、アジアに集中している半導体供給網を自国内に戻すことによって、サプライチェーンのリスクを減らし、自国の半導体産業の復興を狙っている。
上下院を通った半導体支援法案
半導体支援法は、今後5年間米国で半導体工場を新設・拡張する企業に合計で527億ドルの補助金を出すという法案である。米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)、韓国サムスン電子などが支給対象候補となり、投資を促すため25%の税額控除を4年間認める。しかし、その法案には重大な制限事項がある。米国の補助金を受領した場合、中国に半導体の製造設備の新設または増設が10年間できなくなるのだ。
米国は最近、14ナノ以下のチップを製造できる最先端半導体装置の中国への搬入を制限すると発表した。この一連の措置は世界工場である中国の先端製品の生産に多大な影響が与えるものと思われる。中国の反発を覚悟してでも、半導体分野で中国が米国に追いつくようなことがないようにしようとする意図が見え見えだ。今回の半導体支援法の一番の狙いは、米国が失った半導体の製造能力を、国内で復活させることだ。もちろん中国に対するけん制もあるが、それよりも自国の半導体産業を復活させることがもっと大事なのだろう。
(つづく)
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