【福岡IR特別連載106】HTB売却、"土地規制法"指定されても、影響ない
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この「HTB売却、"土地規制法"指定されても、影響ない」という大見出しは、先日9/10の佐世保市定例市議会において自民党議員と行政担当者との間で行われた質疑応答を長崎新聞が報道したヘッドラインをそのまま流用したものである。
具体的には、前号で米国ニューズウィーク誌が懸念し指摘したハウステンボス売却による「日米安全保障問題」を、早速同市議会で取り上げたものだ。
今月施行された「重要土地利用規制法」で、今回買収した中国香港に本社がある不動産ファンド「PAG」が、我が国の安全保障上の大きな懸念となるのか。また、ハウステンボスの土地利用がその周辺施設特別地域に指定されるか、などの自民党議員団6人による質問に対し、佐世保市行政の基地政策局長がこのように回答した……と長崎新聞が報じたものだ。
重ねて批判するが、市議会も新聞社も何とも愚かな醜態をさらすものである。先ず、朝長佐世保市長の「HTBの所有者が中国企業に代わっても……IRに一切影響しない」という発言、次に大石県知事が同様に「一切IRには影響しない……むしろPAGには協力してほしい」という発言。さらに今回は佐世保市の基地政策局長が「重要土地利用規制法の施行や、軍事基地周辺地域が特別指定されても、HTBの施設利用には一切影響がない」と発言する始末である。
このなり振り構わずの組織的責任回避体制は、まことに愚かな平和ボケの極みである。国民を危険にさらす姿勢には驚くばかりだ。日米安全保障、日米経済安全保障、重要土地利用規制法、さらに、IR関連法、政府指導のIR組織組成(コンソーシアム設立に関する)方針など。
これらは、本件において長崎県が提出済みの区域認定申請書とは何1つ合致していないのだ。ハウステンボス売却転売問題で当該隣接地を含む長崎IRパッケージプロジェクトのすべてが、である。「HTBの所有者が海外、国内であっても法規制はない」
これが佐世保市行政基地政策局長の「観光施設だから該当しない……」という返答の理由であり、長崎新聞が報じた彼らの茶番劇の回答である。
何という愚かな質疑応答であり、愚かな行政責任者なのだろうか。
地元マスコミと行政と議会が一緒になって、恥も外聞もなく各々の責任回避に奔走している。この佐世保市議会における質疑応答は、まるで理由になっていない。
「HTBは観光施設だから……」と、子どもみたいなことを繰り返しているに過ぎない。
中国・習近平政権の影響下にある中国企業PAGのハウステンボス買収は、日米安全保障・日米経済安全保障・重要土地利用規制法に一切影響しないと言っているのだ。まったくの暴論である!「観光施設だから」とは、その理由にも根拠にもならない。誰でもわかることだ。すでに、SNS上では炎上寸前である。
質問する方、回答する方、それを報道する方。完全におかしいとしか言いようがない。屁理屈にもなっていない。
ここまで組織保全に徹して良識を放棄するとは、ある意味で凄いことである。しかし昨年8月にデイリー新潮ほか各社が報道しているように、当時の長崎県行政は公開入札公募(RFP)の際、中国香港が本社のカジノ投資企業オシドリインターナショナルとニキチャウフーを日米経済安全保障上適当ではないとして、恣意的に外している。今もこの2社からは訴訟されかねないのが現状である。
当時も、今回施行された重要土地利用規制法には触れており、行政機関はすでにこの問題を十分認識しているはずだ。従って、今回の市議会での質疑応答はまったく辻褄があわない。
朝長佐世保市長が発言しているように、今回のハウステンボス売却と中国企業PAGによる買収は寝耳に水。結果的にはHIS澤田氏に寝首をかかれたのだ。狼狽し、何がなんでも自らの責任を回避し、当該地管轄の行政組織責任には一切したくない……というのが本音である。
しかしオシドリとニキチャウフーを排除したのはたかだか昨年のこと。忘れてしまった、という人も少ないだろう。県民、市民を馬鹿にすべきではない。本当に重要なことは、巨大な利権が絡むIR事業・カジノ事業には、習近平政権の影響力がおよぶ企業の参加は絶対に認められないということだ。
これらすべてが日米経済安全保障であり、とくに防衛上の危機管理とインテリジェンス(諜報・スパイ活動防止)が極めて重要なのである。こんなことは、長崎新聞を筆頭にした地元マスコミ各社は十分に認識しているはずだ。それでいて、この見出しである。いったい何を忖度しているのだろうか。
この国の行政、民間組織のいずれの責任者も、すべて自らの保身ばかりで、重要な決断は一切しない。民間企業の内部留保が約510兆円あると言われて久しいが、賃金も上げず、貯金ばかりして、それを自慢している彼らは世界から嘲笑の対象にされているのだ。
責任者の最大の役目は、腹を括って決断することだ。そのための立場なのに、自らの責任を放棄し、国の判断(IR承認否決)に責任転嫁するなどは、最も姑息な手段。もっての他である。
【青木 義彦】
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