事業総利益を超える迷惑料に値上げ?~軍艦島と漁協(前)
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世界遺産関連で一段と注目を集めている軍艦島上陸見学ツアー。そこには一般に知られていない事実がある。それは、見学ツアー料金のなかに漁協への迷惑料が含まれていることだ。今のところ、上陸見学者1人あたり100円と設定されているが、昨今、これを3倍に上げる動きがあるという。はたして、その設定が適正なものなのか。迷惑料を受け取っている漁協の財務状況から検証する。
迷惑料をもらう野母崎三和漁協
軍艦島上陸見学ツアーを運営する事業者5社との取り決めに基づき、上陸見学者1人あたり100円の迷惑料を受け取っているのは野母崎三和漁業協同組合。同漁協は、長崎半島の南端に位置する野母崎漁協と三和漁協が合併するかたちで1998年3月に設立。古くから漁業が盛んな地域にあり、「正組合員数が50名以下という漁協が全体の4分の1」(水産庁)というなか、正組合員数は約220名と規模は大きい。
角力灘、天草灘、橘湾などの漁場で、ブランド魚「野母んあじ」をはじめ、伊勢エビ、真鯛、ひらめなど多種多様な魚介類を水揚げされており、2010年5月29日には、観光スポットである長崎港フェリーターミナル近くの複合商業施設「出島ワーフ」内に直売所「でじま朝市」をオープンするなど、漁業振興において積極的な取り組みも行っている。
軍艦島上陸見学ツアーについて、同漁協は、「見学を優先し、周辺での漁を行っていない」としており、上陸見学者1人あたり100円の迷惑料はツアー事業者との取り決めがなされた10年4月から受け取っているという。ツアー事業者は、半期ごとにそれぞれの上陸見学者数に基づき、迷惑料を計算し、代表事業者を通じて同漁協に支払っている。
では、その金額は一体いくらぐらいになるのか。長崎県水産部への情報公開から得られた同漁協の財務諸表には、迷惑料についての特別な記載はないが、ツアー事業者が公表している上陸見学者数から計算すると11~14年度で計5,579万円になる。漁を行っていないため、軍艦島周辺での損失がどれほどのものかはわからないが、同漁協の売上高にあたる6,500万~1億円で推移している直近の事業総利益を踏まえると、現時点で20万人以上の見学者が見込まれているツアーからの2,000万円以上の迷惑料は、決して安くはない金額であると言えるだろう。
(つづく)
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