イタリア、極右の女性首相誕生か?(後)
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ディサント(株) 代表取締役
ディサント・ダニエレ選挙の行方を懸念する金融市場
7月、ドラギ首相の辞任のニュースを受け、イタリア国債先物・ユーロが下落するなど市場にも影響が生じた。また、同時期にECBの大幅利上げなどが重なり、イタリア国債利回りが大幅に上昇。不安定な動きが続いている。ムーディーズは8月5日、イタリアの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ、格付けはBaa3に据え置いた。
ドラギ氏は在任中、長年政治・経済不安がついて回るイタリアに国際的信用力をもたらしただけではなく、西側諸国の対露制裁をけん引していた。経済界からはドラギ首相続投を望む声が強く、辞任のきっかけを作った中道左派のポピュリズム政党「五つ星運動」に批判が集まった。
奇しくも前回の選挙で第1与党に躍り出た「五つ星運動」は議員定数削減を公約しており、今回の選挙から下院630から400、上院315から200と議員定数が大きく削減される。「五つ星運動」は、今回の選挙では議席数を大幅に失うとみられている。
なぜイタリアで、極右政党が支持を拡大したのか
現時点の世論調査では、極右※政党「イタリアの同胞」が議会第1党となる見込みだ(※メディアにより中道右派とされる場合もあり)。「イタリアの同胞」は、ネオ・ファシズムにルーツを持つ極右政党で、14年から女性党首ジョルジャ・メローニ氏(45)が党を率いる。
ここでもまた、多くの方が「なぜ急にイタリアの有権者の支持が極右の政党に傾くことになったのか?」という疑問を持たれるかもしれない。そこには、長年の政治不安が続くイタリア特有の事情が影響している。
ローマのDIRE通信社の世論調査(9月1日発表)によると、「イタリアの同胞」の政党支持率は23.5%、次に中道左派の「民主党(PD)」が22%と続く。20%以上の支持を集めているのは、この2党だけである。
「イタリアの同胞」は、「同盟」「フォルツァ・イタリア」などの他の中道右派の党との連合で47%の支持を獲得することで議会最大勢力となり、第1党党首としてジョルジャ・メローニ氏がイタリア初の女性首相に就任する見込だ。
前回の選挙では4%台だった「イタリアの同胞」への政党支持率が急成長したのは、イタリアの政治不安、経済不安により特定の党を支持しない流動的な層が、主要政党の中で唯一ドラギの政権に参加していなかった「イタリアの同胞」支持に回った、あるいは、前回の選挙で「五つ星運動」に流れ込んでいた流動票が、移民の抑制や自国優先主義、税減など主張する右側に流れたとも考えられる。
「イタリアの同胞」はもともと欧州懐疑主義(EUの諸制度に批判的な政治思想)を主張していた。そのため、国際社会や金融市場からはメローニ氏の首相就任を懸念する声がきかれた。このところ政権掌握を見据え、メローニ氏は、このところ欧州連合・北大西洋条約機構(NATO)との連携を表明しイメージ軟化に成功しているようだが、財政政策における新政権の舵取りには懸念が残る。
新政権における最大の課題は、EUから補助金と低利融資によりイタリアに割り当てられることが決まっている2000億ユーロ(約27兆円)を超える、Covid-19からの復興基金の確保だろう。イタリア政府が経験してきた資本投資は年額150億ユーロほどなのに対し、これから2026年までの期限の間に2000億ユーロという莫大な規模の復興計画を実現できるのか。選挙後の動向を見守りたいところだ。
(了)
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