ウォン急落と急増する訪韓外国人(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏急増する訪韓外国人
ウォン安が進み、株式市場から外国人の資金は流出するとともに、貿易赤字も続いている。しかし、そのような状況下でもウォン安の恩恵を受けている分野もある。それは観光産業だ。たとえば、米国人が1ドル=1,400ウォンの今の時期に韓国を訪問すれば、その分コストが安くなる。円高が進んでいたとき、日本人が韓国を訪問し、韓国の製品はものすごく安いと喜んでいた時期があった。ウォンが安いということはドルの価値が上がるということなので、外国人からすれば今の時期に韓国を訪問すればお得なのだ。
では韓国側の恩恵は何だろうか。観光産業が韓国のGDPに占める割合は3%程度で、まだ規模は小さい。しかし、観光産業は国内での消費を促進させることによって、経済を活性化させる起爆剤になり得る。外国人が訪問し、食堂、ホテル、交通、デパートなどを利用することによって売上が発生する。雇用も創出されて、その結果、経済の活性化につながる。
2020年に始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、世界中の観光産業が大きな打撃を受けた。感染拡大防止のために各国が渡航制限措置や国内の外出規制を実施したためだ。韓国の観光産業も例外ではない。韓国を訪問した外国人は2019年がピークで、1,750万2,750名を記録したが、新型コロナが観光産業直撃し、昨年は100万人を下回るほど観光産業は苦戦を強いられた。コロナ渦で観光産業は30年前に逆戻りし、4,000社以上の観光関連企業が閉業に追い込まれた。航空会社や免税店などの場合、ほとんど営業ができなかったので乗務員や免税店の社員などは突如として職を失い、観光産業からの人材流出も相次いだ。
UNWTO(国連世界観光機関)によると、世界のGDPは、新型コロナウイルスの感染拡大をうけた各国の渡航制限措置等により、観光産業を中心に2兆ドルは減少したとされる。とくに韓国はお隣の中国のゼロコロナ政策や、日本が外国人入国の全面禁止を行うなど、世界で一番厳しい水際対策の影響を受けて、コロナ前に比べて90%以上の減少となった。
日本政府は、11日から一部の国と地域からのビザなし渡航再開や、ワクチン接種証明書を提出すればPCR検査陰性証明書の提出を義務付けないなどの措置を表明した。これによって今後、訪日外国人の増加が予想されている。とくに韓国からは今まで3年近く日本訪問ができなかったので、若者を中心にぜひ日本に行ってみたいという人が増え、日本への渡航が爆発的に増えそうだ。日本政府も円安のメリットを生かした日本旅行を積極的に推進する予定である。幸いに世界的にコロナの感染拡大も勢いを失っているため、外国人観光客を積極的に誘致する方向に舵を切ったかたちだ。
韓国政府も、数カ月前から入国者に対するPCR検査を免除するなど、ウィズコロナに政策を切り替えた。これによって、再び韓国を訪問する外国人が徐々に増え始めている。韓国観光デイラボによると、訪韓した外国人は今年1月は1日平均333名であったが、10月には1日平均7,520名へと約22.5倍増加している。国別にみると、米国人が29%で最も多く、その次が日本人で14%、カナダ人が6%を占めている。ウォン安になったことによって、観光客だけでなく、韓国に留学する外国人留学生も増加している。韓国教育部によると、外国人留学生は16万6,892名で、前年比で9.6%増えている。
その一方で、ヨーロッパでは今年の冬に再び新しい変異株が発生することによって、新型コロナウイルスの感染が再度拡大する可能性が懸念されている。世界経済が再び以前のような状態に逆戻りしないことを祈ってやまない。
(了)
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