中国の未来:共産党大会での習近平演説は何を示したのか(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸北京では16日、5年に1度の共産党大会の初日を迎え、習近平・党総書記による政治報告から大会が始まりました。5年前と比べると、2時間弱という短い演説でしたが、ゆっくりとした語り口には自信のほども見えました。しかし、これまでの成果を華々しく訴えた演説内容とは対照的に、中国各地では不穏な空気も漂っているようです。
国民の間で不平・不満が蓄積
最も衝撃的だったのは、北京市内の高速道路の橋げたに習近平批判の横断幕が掲げられたことです。治安当局は徹底した監視体制を組んでいたはずでしたが、思わぬ抜け穴があったということです。
何しろ、横断幕のメッセージは厳しいもので、SNSでたちまち内外に拡散していきました。たとえば、「領袖は要らない。投票用紙が欲しい。」要は、「独裁者ではなく、民主的な選挙を導入してもらいたい」ということです。他にも、「PCR検査は要らない。食べ物が欲しい」とか、政権批判と受け止められるさまざまなメッセージが見られ、国民の間で不平や不満が蓄積していることがうかがえます。
背景には、感染症対策としてのロックダウンや猛烈なインフレに見舞われ、先行きに不透明感を抱く人々が増えていることがありそうです。大学を卒業しても就職できないという異常事態もあちこちで起きています。
習近平主席は、「突如発生した新型コロナウイルス感染症を前に、人民至上・生命至上を堅持し、揺るぎなく『ゼロコロナ』を堅持し、感染症対策の人民戦争、総力戦を展開し、感染症対策と経済・社会発展の両立において重要で前向きな成果を収めた」と発言しました。しかし、多くの国民にとっても、また海外から関心をもって耳を傾けていた人々にとっても、「重要で前向きな成果とは何だったのか」と、疑問の声が出たはずです。
実際、ゼロコロナが経済に与えた影響は大きく、国際通貨基金(IMF)の予測では、中国の今年の国内総生産(GDP)の実質伸率は3.2%にとどまると見られています。党大会の会場となった人民大会堂のひな壇の最前列にはマスクをしない長老がずらりと並んでいましたが、その背後や会場の参加者席を埋め尽くした2,300人ほどの代議員は全員マスク姿でした。
そして、習近平主席は、「これからもコロナ対策は維持する」と宣言。「党大会が終われば、感染症対策は緩和されるだろう」と期待していた国民の多くは落胆したに違いありません。
コロナウイルスの起源が日本?
そんな中、日本にとって気になる動きが密かに進んでいるようです。何かといえば、「新型コロナウイルスの起源が日本ではないか」という研究に他なりません。日本人にとっては「まさか!」でしょう。
しかし、欧米から、「COVID-19は武漢のウイルス研究所から流出したのではないか」と批判的な見方をされている中国は、何とか汚名返上を図りたいと知恵をめぐらせています。その一環でしょうが、フランスとラオスの専門家に委託し、コロナウイルスの発生源と見られるコウモリの研究を行ってきました。
その結果、武漢が発生場所といわれてきた新型コロナウイルスなのにもかかわらず、何とラオス西部の洞窟のなかで発見されたコウモリと密接な関係があることが判明したとのこと。さらに驚かされたのは、同じようなウイルスがカンボジアや日本に生息するコウモリからも見つかったと言い出したのです。
2016年から19年にかけて、日本を始めアジアの8カ国で採取されたコウモリ由来のウイルスを、武漢の研究所ではアメリカの研究者を招いて共同で実験を重ねていたと報告されています。合計2万2,257のサンプルが研究対象になりました。
現在進行中の共産党大会で最も警戒されているのが「新たな感染症の拡大」に他なりません。厳重な感染症対策が実施されているようですが、万が一、新たな変異種による急拡大が発生した場合、その原因が日本に向けられる可能性もあります。「寝耳に水」といった事態に陥らないようにしたいものです。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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