逆境のなかに光明 新たなヒット商品が誕生！

益正グループ

新業態を開発メーカーとして逆境を乗り切る

　かつては20数店舗を展開した益正グループ。以前は店舗も比較的大型のものが多く、郊外にも出店していたが、近年は業態を増やして店舗面積を縮小し、都心部への店舗を集中させた。従来は居酒屋を主体としてきたが、10年ほど前に「脱・居酒屋」を宣言した後は食に力を入れた店舗展開を行っている。

　ピーク時には売上高30億円に達していた同社だが、近年幾度となく外食業界全体が厳しい状況に直面した。2001年、02年の酒酔い運転および酒気帯び運転の罰則強化および04年の飲酒検知器拒否は罰金30万円が加わった同法改正により車の利用者が多い店舗は集客減が見込まれることから、郊外店を撤退。06年8月には福岡海の中道大橋飲酒運転事故の飲酒運転厳罰化により、居酒屋全体が大きな影響を受けた。さらに、11年3月の東日本大震災にともなう自粛ムード、16年4月の熊本地震が発生したことで宴会キャンセルが相次ぐなどの影響を受けた。

　だが、そのような状況でも原点に立ち返り、さまざまな要素を1つずつ見直し、再建を図った。草野社長自らが現場に入り、人的配置のオペレーションなどを見直したり、来店客と直接対話したりするなど、リーダーシップで乗り切った。また、新たな業態の開発にも積極的に取り組んだ。07年にはおせちの販売やナイルカレーの製造、09年3月には高速道路のサービスエリアで「益正レトルトカレー」の販売を開始、10年には自社養鶏場の運営開始、13年には極上の卵料理を楽しむ「卵アート」を開業、15年には本格的なバリスタコーヒー「MASTARS CAFÉ薬院店」をオープン。17年3月には日本市海洋酒場「黒KURO」をオープンさせるなど、常に新しい価値の創造に挑戦し続けている。

佐賀新工場設立で雇用環境を改善

　さらに、18年11月には佐賀県みやき町にミールキットを製造する新工場を建設。ミールキットとは真空状態にした食材に時間をかけてじっくり熱を入れる「真空調理」が、「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ第4の調理法として注目されている。食材本来の栄養を逃がさず旨味を凝縮して引き出す調理法である独自の真空調理「PROREAL」を開発した。仕込み不要で時短調理による残業減で雇用環境の改善、人手不足解消、食材のロスカットなど店舗運営において多くのメリットを有する。グループ店のほかにも、外販、通販、FC加盟店へも供給している。

　それでも、19年後半のインバウンド需要の減退、とくに20年に入り新型コロナウイルス感染拡大の影響で臨時休業や時短営業を強いられるほか、消費者の外食自粛により今までにないほどの過大な影響を受けたという。そのようななか、草野社長が目を付けたのは価格高騰の影響を受けてない「米」だった。

初のお米バーガー専門店 消費者のニーズにマッチ

　「コメコメバーガー」は、九州産ひのひかりを100％使用し、素材とボリュームにこだわるワンランク上のお米バーガーとなっている。ライスバンズを白米・雑穀米から選択可能で、健康志向の人にもおすすめの逸品となっている。博多の老舗「稚加榮（ちかえ）」の明太だし巻きを使用したものから、大豆ミート使用のビーガン向けお米バーガーまで、メニューも充実しており、あらゆるニーズに対応している。

    22年3月には九州・福岡発のお米バーガー専門店として、福岡市城南区神松寺に1号店「コメコメバーガー長尾店」をオープンした。4月には山口県山陽小野田市に「山陽小野田店」、6月には山口県宇部市に「宇部店」をオープンさせ、4カ月で累計3万5,000食のライスバーガーを提供。さらに8月には東京都中央区日本橋に「日本橋兜町店」をオープンすると数多くのメディアで注目され、オープン3日間で600名以上も来店するなど好評を博している。

　10月13日には九州の玄関口であるJR博多駅前に新店舗をオープンした。「博多駅前店」は同日にオープンした「プリンススマートイン博多」（プリンスホテル）内。JR博多駅・博多口から徒歩約6分の好立地であり、ホテルの宿泊客向けにモーニングメニューも提供するなど、ビジネスパーソンや観光客の利用が期待される。

【内山　義之】

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＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：草野　益次
所在地：福岡市中央区赤坂1-4-27
設　立：1996年4月
資本金：5,000万円
売上高：（22/3）3億8,600万円