金利負担増加、韓国の家計債務は「時限爆弾」になるのか(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏経済の流れが変わった。
2008年に発生した米国発の世界金融危機は、世界の金融市場に衝撃を与え、株価暴落や世界同時不況を引き起こした。同年10月、アメリカやヨーロッパ諸国の中央銀行は、世界金融危機から脱するために一斉に政策金利の引き下げを行った。また、アメリカやヨーロッパ諸国では、量的金融緩和策を実施。具体的には、市場に大量の資金を供給し、金融機関が企業向け・家庭向けの貸し出しを増加させて経済の活性化を促進するというものである。
これら一連の政策によって、世界的に資金が過剰となり、低金利時代が長く続いた。その10年後の20年には新型コロナウイルスが世界的に蔓延。世界各国では消費の冷え込みなどを防止するとともに、景気を浮揚させる目的で、大量の資金を市中に供給した。しかし、そのせいか、需要の回復とともにインフレが発生した。
米国の中央銀行である連邦準備制度委員会がインフレを抑えるため、政策金利を大幅に利上げしたことで、経済の流れが大きく変わってしまった。米国が利上げを実施すると、韓国銀行も利上げせざるを得ない。なぜかというと、米韓の金利が逆転すると、韓国に投資された外国人の資金が流出しやすくなるからだ。このような状況下では、ドルは買われ、ウォンを売ろうと需要は大きく伸び、ドル・ウォンの為替レートもウォン安トレンドとなる。
ウォン安になると、資産の目減りを懸念した韓国の株式に投資をした外国人投資家が韓国の株式を売却し、資金を引きあげることになるので、それがウォン安に拍車をかける。
そのような状況下、韓国経済にとっての一番の悪材料は何かというと、家計負債だと専門家は指摘している。文在寅前大統領時代に、韓国の住宅価格は約2.2倍上昇したとの統計がある。市中におカネが豊富になると、どうしてもそのお金は不動産市場などの資産市場に流れやすく、不動産価格を押し上げる要因となる。また住宅価格が上昇すると、ローンを組んで住宅を購入しようとする人も増えてくる。
韓国の家計負債の増加は、それと深く関わっている。しかし、現在は金利が上昇したことによって、住宅価格が下がりつつある。住宅価格は下がっているのに、銀行に支払う利子負担は増加しているので、不動産市場には逆風が吹いている。
家計負債の増加に赤信号
韓国の家計負債は、以前からその危険性が指摘されていた。今回の家計負債増加の原因は、住宅購入のための融資が増えたことと、新型コロナウイルスの感染拡大で、大きな打撃を受けた自営業者などへの融資が増えたことだ。
韓国の家計負債額は21年末に1,800兆ウォンとなり、22年第一四半期に1,859.4兆ウォンとなった。家計負債を減らさないといけない時期なのに負債は増加を続け、21年末を基準に、GDP対比で家計負債は100%を超えて、105.8%を記録した。この数字は米国(76.1%)、香港(95.3%)、イギリス(83.9%)、日本(59.7%)などに比べて圧倒的に高いことがわかる。
また、韓国独特の賃貸システムである全貰(ジョンセ)の保証金まで家計負債に入れると、この比率は153.9%となり、世界最高水準となる。家計負債が警戒される理由は、負債が増加すると、経済危機に陥りやすいからだ。
米国は世界金融危機前に住宅ローンが急激に増加し、GDP対比は、00年の69.7%から08年初には100%近くまで増加した。家計負債急増の結果、世界金融危機がもたらされ、米国はマイナス2.8%成長という厳しい経験をしている。
(つづく)
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