2024年11月24日( 日 )

統一教会被害者救済にブレーキをかける公明党(後)

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勧誘女性 イメージ    全国各地で、自治体と旧統一教会関連団体のつながりが問題となっているが、福岡市では、市が公設民営で運営する福岡市NPO・ボランティア交流センター「あすみん」に、関連団体の世界平和女性連合が登録団体となっていたことが判明した。市民から不安の声が寄せられた福岡市は、弁護士や大学教授などからなる第三者委員会を設置し、登録の取り消しを含めて審議が行われており、議会は意見書を通じて明確な姿勢を示すべきだった。

 福岡市だけでなく、北九州市議会や大牟田市議会、熊本市議会、大分県議会でも意見書案は否決されている。一方で、中間市議会は、「世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)と政界との関係断ち切りを求める意見書」が提案され、保守系も含めた賛成多数で可決された。
 中間市の意見書は、本質を突いた内容であるので紹介したい。

 「世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)は、宗教に名を借りた社会的にも問題のある組織であり、その活動は信者の家庭を壊し、日本の主権を侵し、数多くの政治家との利権構造を生み出してきました。日本では、隠されていた韓国での教義では、韓国中心主義とそれに従属する日本の属国的対応が記載されています。我が国の政治家がこのような目的をもつ組織と関係をもつこと自体が、反国民的であり、また、反社会的ですので、公共の福祉の向上を求める我が国の憲法の理念にも反します。」

 非の打ち所がない内容ではないだろうか。韓国に対して歴史認識などで批判をしてきた人たちが、なぜか統一教会の話になると口が重くなるのは不思議な話だ。

 旧統一教会に関して信教の自由に与える影響を指摘する声が少なからずある。 
 「宗教と政治」の問題ではなく、社会的な問題を多く抱える団体と政治家との問題と捉えるべきだ。「信教の自由」や「政教分離」という憲法上の問題として捉えるべきではない。」

 今年9月の公明党大会において、山口那津男公明党代表がこのように発言している。
 自民党もさまざまな宗教団体の支援を受けている。旧統一教会と今後一切関係をもたないとしたものの、宗教団体に対する規制は選挙を考えるとできるだけ避けたい本音がのぞかせる。ただ、宗教界においても、旧統一教会の霊感商法や献金、合同結婚式など大きな問題を抱える団体であることは認識されており、どの教団も旧統一教会と同一視されたくない。

 やはり問題は、公明党である。同党の支持団体は、創価学会であり、公称会員世帯数800万を誇る。自公連立はすでに20年におよぶ緊密な関係にある。政治的社会的影響力は、他の宗教団体を優に上回る。そういう公明党にとって過去の入信や献金をめぐるトラブルなどを蒸し返されたくない。

 現在の創価学会はどうか。結論からいえば、かつての激しい運動は影を潜め、ソフト路線に転換している。

 読者の皆さんもご経験があるかと思うが、筆者の元にも、選挙前となると学会員の親族や友人から必ず投票依頼の連絡がくる。
 「最近、どうしていますか? 今度、〇〇選挙区は誰々さんが出るので、よろしくお願いしますね」。

 「F取り」といわれるものがこれを指す。Fとはフレンド、友人への投票依頼を意味する。全国でつてをたどるのだろう。居住地でもない場所の選挙でも、知り合いがいないかということを尋ねられることもある。その活動熱心さには脱帽する。

 しかし、選挙運動もかつての勢いはなく、コロナ禍による日常活動の制約もあって国政選挙での公明党の得票率は減少の一途だ。創価学会も、財務と呼ばれる献金が行われているが、強制的なものではなく、むしろ以前に比べて活動も緩やかなため、寄付も集まらなくなっているという。以前は、他宗教を「邪宗」と呼び、神社仏閣の門すら潜ってはならないというしきたりが、厳守されていたが、自公連立を組んで20年の間に、穏健となり、緩和された。創価学会の信徒は、老若男女問わず、自治会やお祭りなど地域のお世話に熱心であることも、社会に定着した理由の1つだろう。

 とはいえ、一時期の折伏と呼ばれる勧誘活動の激しさや、選挙前になると急に連絡が来るといった選挙活動、他宗教や批判勢力に対する先鋭的な主張の記憶が根強くあり、今回の旧統一教会をめぐる問題でも「創価学会も同じ」とみる人も少なくない。

 公明党が、旧統一教会の被害者救済法案に消極的姿勢を感じるのは、そういったお家の事情があることは想像に難くない。

 旧統一教会の悪質さは、他の宗教団体とは比較にならない。街頭や大学キャンパスなどでの勧誘活動において、組織の正体を明示せずに、勧誘することがまず挙げられる。そこから、セミナーに参加させ信者にして、異常な額の献金や霊感商法を行わせて吸い上げた利益はほとんど韓国に送金してきた。組織上層部は、あくまで一部の信徒が行った経済活動だといまだに無関係と主張している。

 今、公明党が問われているのは、旧統一教会の問題に対して、政府与党の一員として、根本的な問題提起を行うことだ。率先して被害者救済法の整備に取り組むことが求められている。

(了)

【近藤 将勝】

(後)

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