金利負担増加、韓国の家計債務は「時限爆弾」になるのか(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏家計負債増加の原因は
同じ資本主義国家であっても、国によって経済の状況や商習慣は違う。そのため単純比較してしまうと本質を見誤るケースがある。
韓国にはほかの国には存在しない全貰(ジョンセ)という制度がある。ジョンセというのは家を借りるときに、まとまった金額を大家に預け、家を明け渡すときに、全額を返してもらう制度である。従って毎月家賃を支払う必要はない。この制度は、言い換えれば、家を担保にして貸借人からお金を借りることと同じである。
お金を貸したら利子を取ることになるが、利子は貸借人に支払う家賃と相殺されることによって、お互いのリスクをヘッジしている。しかし、別の見方をすれば、ジョンセ保証金は、金融機関から借りたお金ではないので、統計上、家計負債にカウントされていない。しかし、保証金は契約期間が終了すれば、大家が貸借人に返さないといけないので、負債であることは間違いない。
韓国のジョンセ保証金の規模は、2020年の統計で851兆ウォンになったという。しかし、一部では、ジョンセ保証金も貸借人が銀行から借りて大家に提供しているので、その金額の一部は統計に入っているという主張もある。
先進国では収入の30%~40%を家賃として支払っているという統計があるが、韓国のジョンセ制度は、もっと少ない負担で住宅問題が解決できる方法なので、ジョンセ制度が韓国の経済発展に寄与したとされる。しかし、今後統計の取り方を改善し、銀行の借り入れによらないジョンセ保証金の金額を把握する必要があるだろう。
インフレを抑制できるまで、米金融当局は利上げを続けていくと思われるが、そのような状況下で、大きすぎる負債を抱えた家計は、どれだけ耐えられるのかが注目されている。
家計負債がトリガーとなって、またもやアジア通貨危機や世界金融危機のような経済危機に陥るのではないかと、韓国金融当局も神経を尖らせ、家計負債の抑制に乗り出している。一方、韓国の家計負債は高所得者が中心になっているだけでなく、延滞率も1%に程度に過ぎないので、大丈夫だという主張もある。しかし、経済に衝撃が加われば、どのようなことが起こるかわからないので、事前にそれを防ぐための努力をするのが賢明ではなかろうか。
韓国人の資産の8割ほどを占めている不動産価格が下がっているなか、金利上昇で負担は徐々に増加しているので、それがどんなリスクに発展するのか、世界が韓国経済の行方に注目している。
(了)
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