旧統一教会をめぐり揺れ動く九州の地方議会
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政府与党は、旧統一教会をめぐる悪質な寄付要求行為の規制などを盛り込んだ新たな法案を今国会に提出する方針を固めた。教団と政治家の関わりが問題となるなか、福岡市など九州の地方議会において教団との絶縁や被害救済などを求める意見書が出されているが、相次いで否決されている。その背景を探った。
地方議会にも浸透する旧統一教会
「朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」
安倍晋三元首相が、2021年9月、旧統一教会の関連団体UPF(天宙平和連合)などが主催した「神統―韓国のためのTHINK TANK 2022希望前進大会」に寄せたビデオメッセージである。
日本の憲政史上最長の政権を担った元首相が、霊感商法などの反社会的活動が問題視されてきた旧統一教会の総裁を称えた発言は、多くの日本国民に衝撃を与えた。
22年9月8日、自民党は党所属国会議員に求めていた旧統一教会や関連団体との関係についての点検結果をまとめ、茂木敏充幹事長が記者会見を開いて公表した。そのなかには、複数の福岡県選出議員の名前も挙がっていた。
霊感商法の被害は福岡でも多く報告され、1994年5月の福岡地裁判決において献金・勧誘の違法性が全国で初めて認められた。2009年には、福岡県警公安1課が、当時博多駅近くにあった旧統一教会系の販売事業会社の販売員を逮捕し、旧統一教会の福岡教会などを家宅捜索している。
東京・大阪など全国各地で同様の摘発が行われ、東京渋谷にある教団本部への家宅捜索は免れたものの、旧統一教会はこのことに強い危機感をもち、それまで距離を置いていた安倍元首相に接近したといわれる。
教団と政治家との関係は国政だけの話ではない。地方自治体や議会ではどうなのか。たとえば、13年に福岡国際会議場で日韓トンネル推進福岡大会が開催された。同トンネルは文鮮明氏の提唱で始まったもので、教団との関わりが深い。この集会には、自民党など保守系の県議が複数参加しており、ある県議は自身のFacebookで詳細を報告していた。
23年4月には統一地方選挙が実施される。岸田内閣の支持率は40%割れ(朝日新聞社11月世論調査では37%)に陥り、好転の見通しは厳しい。地方議員にとっても、当落に影響しかねず、複数の議会で調査を行う動きがある。
被害者救済へ向けた動き 福岡市では自公が否決
福岡県議会においては、旧統一教会などと議員の関係を対象とした調査委員会が設置された。桐明和久議長が議会運営委員会に諮問し、9月22日に設置されたもので、会議を重ねている。久留米市議会では、自民党系会派が決算審査特別委員会において、旧統一教会による市の施設の利用状況や市に登録しているボランティア団体に含まれていないか質問し、市側が調査を行うことを言明した。
八女市では、昨年12月、旧統一教会が市民会館で集会を開催していたことが発覚した。市民団体から要望書が市議会に提出され、当初は議会側も消極的だったが、複数の議員から調査を求める意見が続出し、担当部局に確認することとなった。
旧統一教会と政治家をめぐる問題や、被害者救済などを求める意見書案が全国の地方議会で提案されている。福岡市議会では、共産党および旧民主党系(福岡市民クラブ)の議員が10月11日に「旧統一教会と政治家との関係について調査し、宗教法人法に基づく断固とした対応を求める意見書案」を提案したが、自民、公明などが反対にまわり、反対多数で否決された。
同意見書案の内容は、「旧統一教会は、「霊感商法」や多額の献金の強要、集団結婚などで多数の被害者を出してきました」としたうえで、「政治家が、このような団体と癒着することは、国民の政治に対する不信感を増すことや、さらなる被害者を生み出すことにつながりかねません」と指摘。「福岡市議会は、国会及び政府が、旧統一教会と政治家との関係について調査したうえで、世界平和統一家庭連合に対し、宗教法人法に基づき断固とした対応を取られる」ことを求める内容。ところが、文案調整の段階で、自公が意見書の名称に旧統一教会や霊感商法を入れるかどうかをめぐって意見が分かれ、共同提案に乗らなかったという。複数の福岡市議が旧統一教会と接点をもっているため、やはり触れられたくないようだ。自民党は多くの宗教団体の支援を受けており、とりわけ公明の支持団体である創価学会への配慮から、宗教に関する事項をできるだけ政治問題化したくないのであろう。しかし、今や学会の選挙運動も布教活動もソフト路線となっており、むしろ旧統一教会を庇っているように受け止められることこそ不本意なのではないか。
福岡市だけでなく、北九州市、大牟田市、熊本市および大分県の各議会でも意見書案は否決された。北九州市では、旧民主党系会派から「旧統一教会などによる被害の防止、救済を求める意見書案」、共産党からは「旧統一教会と政治との深刻な癒着の一掃と被害の根絶を求める意見書」が提案された。しかし、福岡市同様、いずれも否決されている。
一方、可決した議会もある。中間市議会は「世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)と政界との関係断ち切りを求める意見書」を、保守系も含む賛成多数で可決した。
福岡市、北九州市には複数の教団施設が存在し、旧統一教会との接点を有する議員が少なからずいる。ただ、地方議会の本来の役割は市民を守ることという基本に立ち返ってほしい。霊感商法や生活が破綻するほどの巨額献金などの被害に対して、議会として真摯に取り組むべきではないか。
【近藤 将勝】
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