2024年12月05日( 木 )

西日本タクシーの再編とオーナー一族のこれから(前)

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西日本自動車(株)

 福岡のタクシー業界における草分け的な存在である“西日本タクシー”の西日本自動車(株)(福岡市中央区 代表:井上博行氏)は、九州運輸局へ法人分割を申請している。同社は、博多の世話人としてまちの発展に尽くした井上吉左衛門氏が創業し、今日まで井上一族がオーナーとして経営に参画。現衆議院議員で吉左衛門氏の孫の貴博氏と現福岡県議会議員で貴博氏の実弟の博行氏が役員に名を連ねる。貴博氏は6月25日、安倍晋三首相に近い自民党の若手議員らが党本部で開いた勉強会『文化芸術懇話会』で「マスコミを叩くには、広告料収入と、テレビの提供スポンサーにならないこと。日本全体でやらないといけない。一番こたえるだろう」という言論封殺を助長する発言があった。貴博氏の暴言に対し、各方面から批判の声が上がった。同社の法人分割に影響を及ぼすか?

博多の名士一族

 もうまもなく福岡・博多の夏の風物詩である『博多祇園山笠』(国指定重要無形民俗文化財)が本番を迎える。我が国だけでなく、世界中で認知されているこの『博多祇園山笠』の発展に長年貢献した代表的な人物として、井上吉左衛門氏の名が必ず語られる。吉左衛門氏は、博多祇園山笠振興会の設立の中心人物で、同会の2代目会長を27年間務めた。また、1951年に福岡市議会議員に初当選した後、55年には福岡県議会議員に初当選。その後は県議を6期連続で務め、その間74年から1年間は県議会議長に就任したほか、自民党福岡県連の総務会長・幹事長・副会長などを歴任した。長年の功績が讃えられ、76年に勲四等旭日小綬章を受けた。

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井上邸

 吉左衛門氏は、政治・経済そして地域振興に対して自ら先頭に立って舵取りを行い、ともに汗水を流して働いてきたという。幅広い人脈により、懐の深い人間関係を構築し、人々への世話が使命と感じるほどさまざまな案件をまとめ上げ、ときには陳情やトラブルなどへの対応も丁寧に対応し、解決させるなど、吉左衛門氏は、博多の『名士』として名を馳せた。

 吉左衛門氏の実子である井上雅實氏は、同社の代表を継承し、そして同振興会の5代目会長に就任。父・吉左衛門氏と同じく、博多祇園山笠の発展と進化に寄与した。福岡県議会議員そして県議会議長を務めたことも、父の背中を見て育ち、同じ道を歩むことで地域の振興に尽くしたのである。

 現在は、吉左衛門氏の孫で雅實氏の子息である井上貴博衆議院議員と、井上博行福岡県議会議員の両名が継承し、同社のオーナーとして名を連ねると同時に、国政と県政でそれぞれ国家・国民そして地域の発展および振興のために、日々精力的な活動を続けて今日に至る。井上一族は、代々地域の人々のお世話を使命とした事業および政治活動、地域の振興活動に尽力している名士の一族である。その証は、吉左衛門氏の銅像が博多歴史館に建立されていることからもわかる。

 貴博氏が以前、他媒体のインタビューにて「自宅のある中洲1丁目に、ソープランドの集積のきっかけをつくったのは祖父(吉左衛門氏)で、自治体が思案していた中“うちの周りに集めればいい”と一声かけたことです」という豪傑なエピソードを語っている。事実、現在も中洲1丁目のソープランド区域のなかに、井上家の邸宅が存在する。当時、ほかの候補地の住民が猛反対して、自治体が困っていたなか、吉左衛門氏が手を差し伸べたのである。

(つづく)
【河原 清明】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 博行
所在地:福岡市中央区那の津5-4-3
設 立:1950年7月
資本金:1,000万円
売上高:(14/3)11億4,000万円
TEL:092-761-7150

 
(中)

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