【新幹線焼身自殺】年金12万円「下流老人」が普通になる(前)
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走行中の東海道新幹線「のぞみ」の車中で男性(70)が焼身自殺した事件は、巻き添えとなって乗客の女性1人が死亡、多数が重軽傷を負った。
実に、病んでいる。自殺した男性が病んでいるのか、社会が病んでいるのか、両方なのか。
「水と安全はただ」と言われてきたが、もはや「死語」と言っていいほど、日本社会の実態は違ってきている。今回の事件は、安全とともに、老後の生活が生活保護以下になるという「下流社会・日本」の新たな問題を投げかけた。男性は、年金が月12万円だったという。報道によれば、「年金が少なく、生活が苦しい」と周囲にもらしたり、生活保護の相談をしていたという。
ところが、実は、この金額は、年金生活者の平均からみれば、けっこう多いというのが、今の日本の現状だ。
国民年金の、いわゆる1階部分の老齢基礎年金しかもらっていない年金受給者の平均が月4万9,869円(2013年度末)。満額でも年約77万円なので月約6万5,000円に過ぎない。月4万円未満が老齢基礎年金受給者の36%を占める。今まで、低年金問題といえば、こうした低所得者の対策が問われてきたが、65歳以上の高齢者人口が3,300万人を突破し、人口の26%を占めるようになった今、年金生活者の貧困問題は、静かに広がっていた。
この男性は、厚生年金に加入していたと思われ、国民年金に加入していなかった低年金者よりもはるかに年金収入があった。生活が苦しかったというのは、間違いではないが、従来の低年金問題とは違う。また、借金返済があったという報道がある。自己破産して借金を帳消しにして、再スタートする道もあった。月12万円は多くはないが、年金生活として低年金者ではなく、みんなが事件を起こしたり転落するわけではない。
逆に、月12万円が低年金ではなく極めてありふれているからこそ、老後の生活保障の問題がクローズアップしてきた。
月12万円という年金を、現役労働者と比べてみると、たとえば、最低賃金は福岡県727円。1日8時間、週40時間目いっぱい働いて月12万円の最賃労働者とほぼ同じだ。
正社員になれず、パート・アルバイト、有期雇用の繰り返し、派遣労働者など非正規労働者のワーキングプアが社会問題になっているのと同じように、老後の世代にも、新たな貧困が訪れてきた。(つづく)
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