2024年11月23日( 土 )

すべては本体工事着手実現へのアシストだった?

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 政治経済学者の植草一秀氏が7月28日、自身のブログとメールマガジンの記事で、沖縄県・辺野古の新基地建設問題で、本体工事の事前協議をめぐる動きを解説した。NETIBでは、同記事の一部を抜粋して紹介する。


 ものごとには「核心」部分がある。「本質」と呼び換えてもよい。ものごとを動かす、動かさないためには、この「核心」部分を確実に押さえることが必要である。

 沖縄の辺野古海岸で米軍基地建設が進められている。安倍政権が米軍基地建設を強行している拠り所は仲井真弘多前知事による「辺野古海岸埋め立て申請承認」である。これに基づいて米軍基地建設が強行されている。すでにボーリング調査が開始されている。
 そして、辺野古米軍基地建設の「核心」は、もちろん本体工事である。

 安倍政権は、この夏にも本体工事に着手する方針を示してきた。しかし、本体工事に着手するために、通らねばならないプロセスがある。それは、県による埋め立て承認の留意事項のなかに、「本体工事に入る前に事前協議すること」という条件が付されていることだ。
 この事前協議のプロセスを経ずに本体工事に入ることができない。
 つまり、安倍政権が辺野古米軍基地建設を強行推進して、既成事実を積み上げるためには、この「事前協議」が必要不可欠なのである。これが「核心」である。

 防衛省沖縄防衛局は7月24日、米軍新基地建設の本体工事着手に向け、沖縄県に護岸の設計図と環境保全対策に関する協議文書を提出した。県は受理を保留したとしているが、防衛省は「県が受け取ったので協議は開始した」として、3週間をめどに見解を回答するよう求めた。沖縄県は海外出張中の翁長雄志知事が帰国後の週明け(27日の週)に取り扱い
を協議するとしている。
 国は、必要書類を提出したから、3週間をめどに回答がなければ、「県が事前協議をはねのけた」として、本体工事に入る構えである。この「事前協議」が本体工事を強行するために必要不可欠な「核心」なのである。いくら国といえども、埋め立て承認に明記されている「事前協議」のプロセスを経ずに本体工事に入ることはできない。
 「事前協議」に入るためには、必要書類の提出が必要不可欠である。
 逆に、必要書類を提出さえしてしまえば、「事前協議」の必要要件を満たしたとして、県が協議に応じなくても、「県が協議をはねた」として、本体工事に入る大義名分を得たと主張することになるだろう。つまり、沖縄県はこの書類を受け取ってはならなかったのである。
 沖縄県は「不受理」としているが、現実に書類は受け取っているのだ。知事が戻って対応を協議すると言うが、すでに書類を受け取ってしまったことは事実である。

 ではどうするべきであったのか。
 提出書類を受け取ってはならなかったのだが、そのためには、明確な法的根拠が必要である。明確な法的根拠とは、沖縄県が埋め立て申請承認を撤回または取消することである。沖縄県が埋め立て承認を撤回または取消していれば、沖縄県は防衛省が提出する書類を受け取る必要がなくなる。「受理」とか「不受理」とかを言う前に、書類そのものを受け取ることを敢然と、正当に拒絶できるのだ。

 しかし、埋立承認を撤回ないし取り消すまでは、提出書類を受け取らない正当な根拠がない。翁長雄志知事が埋め立て承認の撤回および取消を今日まで行わなかった最大の目的は、この「事前協議」のプロセスを国に付与することにあったのではないか。本体工事に入って、本体工事が進展すると、のちに知事が埋め立て承認を取り消しして法廷闘争に移行しても、「訴えに利益なし」の判決が示される可能性が格段に高まる。
 翁長雄志知事の行動は、国による本体工事着工の「アシスト」をするところに、本当の目的があるのではないかと推察される。

※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1203号「翁長知事が埋立承認取消を先送りしてきた深層」で。


▼関連リンク

・植草一秀の『知られざる真実』

 

 

 

関連記事