東芝の闇は貸借対照表にあり(前)
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(株)東芝が、総額1,500億円余の利益を過大に計上していたことが発覚した“粉飾決算”スキャンダルは、西田厚聰相談役(元会長)、佐々木則夫副会長(元社長)ら経営幹部8人がそろって引責辞任することで幕引きする公算が高まっている。だが、東芝の財務の闇は、はるかに深い。東京地検特捜部も証券取引監視委員会も、相手が財界本流の東芝とあっては、怖くて刑事罰までは踏み込めない。
東芝が委嘱した第三者委員会が調べたのは、あくまでも彼らが委嘱された4つの事柄(工事進行基準案件にかかわる会計処理、映像事業の会計処理、半導体事業の在庫に関する会計処理、パソコンの部品取引における会計処理)だけであった。その委嘱された範囲内で調査し、経営陣が「チャレンジ」などと称して無理に利益目標を立てさせたことが不適切な会計処理の原因となった、とみなした。結局は利益の水増し、損益計算書上の問題としたのだ。
では、なぜ過大な利益計上が必要になったのか――。第三者委員会が答えていない「闇」が、東芝の貸借対照表に潜んでいる。その1つが1兆円にも上る巨額の「のれん及び無形資産」である。東芝の資産6兆2,000億円のうち、実に16%が交換価値のない「のれん及び無形資産」なのである。このなかで3,500億円を占めるのが、東芝が2006年に買収した原発メーカー、ウエスチングハウスの「のれん代」である。
もともと東芝がつくる原発は、米ゼネラル・エレクトリックからライセンス供与を受けた沸騰水型原子炉(BWR)だった。ウエスチングハウスはそれとは形式が異なる加圧水型原子炉(PWR)の技術を持ち、日本では東芝のライバルである三菱重工業がライセンス供与を受けていた。1990年代に経営が悪化したウエスチングハウスは事業を次々に手離し、原発部門は英核燃料公社(BNFL)が買収。そのBNFLも持て余して06年に売りに出したところ、GE、三菱重工と争奪戦の末、手中に収めたのが東芝だった。このときのウエスチングハウスの実質的価値は2,000億円程度とされ、東芝はその3倍の値段で買い取ったことになる。
巨額ののれん代は、日本の会計基準だと10年間で償却しなければならず、毎年の期間損益はその分、圧縮される。ところが、東芝の採用している米国会計基準では、償却する必要がない。だから高値で買っても損失が表面化されることは避けられ、資産を膨らましたままの効果を持つ。
米国会計基準は制度上、毎年1回、資産が減損していないかどうか確認する「減損テスト」の実施が義務付けられてはいるが、東芝は「減損の兆候はない」として、これまで一度も実施していない。06年時点ではウエスチングハウスの買収によって世界中に原発を売り込むバラ色の将来像が描けたかもしれないが、11年の福島第一原発事故以降はとても成り立たないだろう。にもかかわらず、見直しはなされていない。(つづく)
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