FTX破産、暗号資産市場の「リーマン・ショック」になるのか(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏最大規模の経営破綻
低金利時代が終焉し、暗号資産市場から資金が出ていく中、FTXは流動性不足に陥り、破産に至った。「バイナンス」CEOのチャンポン・ジャオ氏がFTXを買収するというニュースもあったが、11月9日、バイナンスはデューデリジェンス中に発見した、顧客資金の誤処理と、それにともなう連邦政府による捜査の可能性を理由に、この取引から手を引くと発表した。
このニュースにより、FTTはさらに急落し、サム・バンクマンフリード氏は1日で純資産の94%を失った。彼は純資産の94%とCEOの肩書を失い、彼の「暗号帝国」が破産を申請するという結果となった。
FTXが裁判所に提出した資料によると、資産額と負債額はともに100億ドルから500億ドルの範囲内とされている。サム・バンクマンフリード氏の投資会社、アラメダ・リサーチについても、負債総額は100億~500億ドルだという。
金額が確定したわけではないが、負債総額は数兆円規模に達し、暗号資産業界で最大規模の経営破綻となる見込みだ。FTXの米国事業を除くグローバルサービスは90億ドルの負債を抱える一方、すぐに売却可能な流動性資産は9億ドルしかないという。さらに、FTXは暗号資産取引のために約100万人とされる顧客から預かった160億ドルのうち、約100億ドルをアラメダ・リサーチに貸し付けていたという。また、経営者の不公正な取引も明らかとなっている。
ウォールストリート・ジャーナル紙の報道によると、約3億7,100万ドルがハッキングによってFTXから不正に引き出されたという。
FTXは2019年創業で、利用者は100万人以上。FTXの財務面に問題があるとの報道がきっかけとなって信用不安が高まり、投資家が相次いで資金を引き揚げたことで、資金繰りが行き詰まった。
FTXと金融取引をしたのは、暗号資産取引所はもちろん、年金基金、ベンチャーキャピタル、個人投資家に至るまで広範囲におよぶ。アメリカの「ジェネシス・グローバル・トレーディング」はFTXに1億7,500万ドルを預けているが、出金ができない状態だ。FTXから資金の支援を受けていた暗号資産貸付業者「ブロックファイ」は流動性危機に陥り、引き出し業務を中止した。暗号資産の会社だけでなく、多くの金融機関がFTXに投資をしているので、08年のリーマン・ショックの再燃になりかねないと危惧する声すらある。
今年1月にFTXに投資したのは、カナダ・オンタリオ教職員年金基金、シンガポール国富ファンド、ソフトバンクビジョンファンド、ベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタル、ヘッジファンドのタイガー・グローバルなどで、すべて巨額の損失が予想されている。
暗号資産市場にどのような影響を与えるのか
韓国の暗号資産取引所の取引額は、FTX破産の発生以前に比べ、約20%近く減少している。それに、大手取引所も信用できなくなったのか、取引所全体からビットコインが出金されている傾向がある。FTX破綻をきっかけに、取引所に預けていたビットコインをユーザーが自身のウォレットに移動させたり、利用している取引所の変更をしたりしているようだ。FTX破綻の余波がどこまで広がるかは未知数だ。FTXの破綻は、より大きな仮想通貨(暗号資産)の崩壊が迫っているといった恐怖を煽るものとなっている。
(了)
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