2024年12月23日( 月 )

破綻した暗号資産交換業FTXの広告塔に使われていた大谷翔平

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、11月25日付の記事を紹介する。

暗号資産 イメージ    暗号資産(仮想通貨)交換業の最大手FTXトレーディング(本社・バハマ)が11月11日、経営破綻しました。「暗号通貨の王様」ともてはやされていましたが、5年持たなかったわけです。アメリカでの報道によれば、債権者は10万人を超え、負債総額は数兆円に上ると言われています。暗号資産業界においては過去最大級の破綻であり、業界への信頼が大きく揺らいでいることは間違いありません。

 FTXは2019年にサム・バンクマン・フリードという、現在30歳の青年によって香港で設立され、その後、バハマに拠点を移しました。バンクマン・フリードは1992年生まれで、両親共にスタンフォード大学の教授です。彼はMITで物理と数学を専攻しました。関連会社は130社におよび、日本やキプロスにも支社を設立。

 多様な暗号資産関連商品を開発し、世界中の投資家の関心を集めてきたわけですが、主な投資家はアメリカです。著名なスポーツ選手や芸能人とスポンサー契約を結び、利用者の拡大に結び付け、短期間で世界有数の暗号資産交換業者に成長させました。

 FTXのCMには米大リーグで活躍中の大谷翔平選手が起用され、女子テニス界の花形、大坂なおみ選手も出資者に名前を連ねていたものです。孫正義氏の率いるソフトバンクグループのファンドも1億ドルを出資。最盛期、バンクマン・フリードの資産は260億ドルに達しました。

 ところが、11月2日、状況が一変しました。暗号資産専門のニュースサイトがFTXの財務面の問題を指摘してことがきっかけとなり、信用不安が広がり、投資家が一斉に資金の引き上げを始めたのです。その結果、わずか9日で資金繰りに行き詰まり、米連邦破産法11章の適用を申請し、自己破綻することになってしまいました。

 その結果、バンクマン・フリードの資産はゼロになります。ソフトバンクが投資した1億ドルも消滅することになり、孫正義氏にとっては頭痛の種がまた1つ増えたことになります。

 一方、「話題づくりの天才」と異名を取るイーロン・マスク氏ですが、ツイッター買収を画策していた際にも、バンクマン・フリードから資金提供の申し出があったと述べています。曰く「あの若造と30分ほど話したが、信用できないと判断し、断った。俺の目に狂いはなかった」。

 いずれにせよ、FTXにおいては、その後も続々と不祥事が明らかになっています。たとえば、顧客からの預かり資産を流用し、グループ内で違法な資金管理を重ねていたことが判明し、米証券取引委員会(SEC)も内部調査に入っています。日本の金融庁も無登録営業をしていたFTXジャパンに対し、一部業務停止命令を含む行政処分を出しました。

 こうしたFTXの破綻は暗号資産の代表格であるビットコインへも大きな影響を与えています。ビットコインの価格は急落し、1年前の約4分の1まで値下がりし、1万5,000ドル台を推移する有り様です。なお、日本ではあまり話題となりませんでしたが、バンクマン・フリードはCEO時代、アメリカの民主党に4,000万ドルの政治献金をしました。

 500万ドルを受け取ったバイデン大統領にとっては心強い存在だったでしょう。なぜなら、これはジョージ・ソロスに次ぐ多額の献金に他ならないからです。その狙いはバイデン大統領を味方に付け、同時に暗号市場の規制を検討する委員会の所属議員への圧力だったと想像されます。

 さらにいえば、FTXはウクライナ戦争にも深く関与していたようです。これから徐々に明らかになるでしょうが、アメリカ政府がウクライナへ提供してきた資金援助の一部がロシアとの戦闘に使われず、FTXへの投資に流用されていたといいます。アメリカのメディアがFTXの破産申告書類を調べたところ、ウクライナ政府からFTXへの資金の流れが記載されていたとのこと。

 しかも、その資金は現在、行方不明で所在が確認できないといいます。要は、ロシアと戦うウクライナを支援するために民主党政権下で提供された莫大な資金をゼレンスキー政権はFTXに投資し、それなりの見返りを期待していた事実が白日の下にさらされつつあるわけです。実に「怪しい世界」の取引としか言いようがありません。

 次号「第320回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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