韓国の建設業界に忍び寄る連鎖倒産の危機(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏金利上昇で不動産価格は下落に反転
韓国人がもっている資産の80%ほどは、住宅などの不動産で占められている。韓国人にとっては資産といえば、金融資産より、マンションなどの不動産がメインだ。そのため、所有している住宅価格が上がるかどうかは、個人の資産形成には大きな影響をおよぼす。
ソウルのマンション価格は、文大統領が就任した2017年5月には、坪当たり2,061万ウォンだったが、今年11月には4,309万ウォンとなり、2倍ほど跳ね上がった。これは韓国だけでなく、世界的にも同じ現象が起こった。というのは、2008年に金融危機に見舞われた世界各国は、景気を刺激するために、大量の資金を市中に供給したからだ。さらに低金利時代も長く続き、銀行からお金を借りやすくなり、豊富な資金は不動産など資産市場に流れ込んで、不動産価格を押し上げることとなった。
今年の第2四半期を基準にしたソウルの所得対比の住宅価格比率は、18.5倍で史上最高となった。そのような状況下で、不動産価格の高騰が続くと見込んだ韓国の若者を中心に、このチャンスを逃すまいと銀行から限度いっぱいまでローンを組んで不動産を購入する動きが増えはじめた。ところが、ウクライナ戦争勃発、世界的なインフレ、米国の利上げ、中国の経済失速、韓国金融市場の萎縮などの悪材料が重なり、不動産価格は下落に転じてしまった。経済動向の変化は資産価値の減少を招いただけでなく、ローンの金利が上がり、金利負担が若者たちに重くのしかかっている。
アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)による急激な利上げの影響で、資金の流動性が急減されたことによって、住宅取引は凍てついた状態に落ち込んだ。また昨年までは2%台だった住宅ローン金利が今年末には8%まで上がるといわれており、巨額の銀行借入でやっとマイホームを手に入れた若年層は戦々恐々としている。マンションの価格が5年間で2倍ほどに高騰したことで、所得水準に見合わない多額の借り入れが必要になった。ところが、その借入の8割は変動金利という条件だったことで、債務者は利上げで大変な状況に陥りつつある。
韓国メディアによると、ソウルのマンション価格は9月第3週まで17週連続で下落が続き、2008年のリーマン・ショック以降で最大の暴落を記録している。取引量も歴代最低の落ち込みで、前年度対比では257%減、最悪だった2012年と比べても162%減ったという。それに韓国では、人口減少と高齢化が急速に進んでいることも不動産には悪材料である。韓国の経済専門家は、韓国経済の危機リスクのなかでも、不動産発の経済危機を最も危惧している。
(つづく)
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