2024年11月23日( 土 )

原発の60年超え運転が可能に、停止期間を除外

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原発、60年を超え運転が可能に

 最長でも60年とされてきた原発の運転期間に関して、12月16日の経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で、60年を超えた運転が可能となる方針が議論されたという。現行制度では、原発の運転期間は原則で40年、延長で60年とされているが、原子力規制委員会の審査などにより運転が停止している期間を運転年数から除外することで、この方針の実質的な転換を進めている。

 ウクライナ危機などによる資源供給のひっ迫による「エネルギー危機」が叫ばれる陰で、政府の原発推進の姿勢が強くなっている。2011年の福島第一原発事故でさまざまな問題が表面化し、安全性への懸念から原子力政策の見直しが求められた。その対応として、現行制度の原則40年、最長20年延長が導入された経緯がある。しかし原子力政策は現政権で大きく転換され、実質的な「原発の活用」に向けて大きく動き出している。政府は原発の利用は「安全性が最優先」だとしているが、そうであれば原発事故を教訓にした現行制度の安易な改正ではなく、今一度きちんと安全性に向き合ったうえでの制度設計が必要ではないだろうか。

安全性は確保されるのか

現在稼働中の四国電力(株)の伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)
現在稼働中の四国電力(株)の伊方原子力発電所
(愛媛県伊方町)

    最長60年とされてきた原発の運転期間であるが、今回の改正方針によれば、東日本大震災発生後の安全規制などの法制度変更にともなって生じた運転停止期間、行政命令・勧告・行政指導などにともなって生じた運転停止期間、裁判所の仮処分命令などにともなって生じた運転停止期間を除くことで、60年超え運転が実質的には可能となる。

 日本の電源構成を見ると、東日本大震災以前の10年度までの原発の割合は約25~34%と高かったが、11年の東日本大震災をきっかけに原発への依存度は大きく下がった。原発の割合は一時期、約1%まで下がっていたが、16年度以降じわじわと上昇し、21年度は約7%まで増加した。同分科会では、30年度の電源構成に占める原発の割合を20~22%とする目標が挙げられており、この目標を前提として、60年を超えた運転を可能とする議論が進められたのだろう。

 設置変更許可済の原発のなかには、地元の理解の問題などで再稼働のメドが立っていない原発もある。そのため、いつになるか分からない再稼働に向けて、運転停止期間を含めないことで実質の運転期間を延ばし、コストを回収しやすくすることも目的の1つだと考えられる。また、老朽化により稼働できる原発が将来的に減少するなか、できるだけ稼働数を増やしたいという意図もあると推測される。

 しかし、国内では運転期間が40年に満たない原発でも事故や不具合が起こっており、日本は地震があることも考えると、老朽化した原発を稼働することに大きなリスクがあるのはいうまでもない。

 米エネルギー省は13日、「核融合」を用いて投入量を上回るエネルギーが出力できたという研究結果を発表した。このことで、原発に用いられている「核分裂」とは異なる方法でもエネルギーが得られることが実証された。核融合とは、太陽でエネルギーが生まれる仕組みと同じで、核分裂とは異なる。核融合は40~50年ごろに商業化されると見込まれている。核融合に関しても、安全性などの検証はもちろん必要だ。

 核融合にとどまらず、画期的なエネルギー技術が開発されれば、将来、「原発以外」が選ばれる可能性もあるだろう。

【石井 ゆかり】

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