栄光極めた組織・個人、2023年の行方は(1)~孫正義もビックリ!FTXの倒産とSBFの逮捕(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸より衝撃的だったのは、FTXはウクライナ戦争にも深く関与していた事実です。アメリカ政府がウクライナへ提供してきた資金援助の一部がロシアとの戦闘に使われず、FTXへの投資に流用されていたことも判明しています。
要は、ロシアと戦うウクライナを支援するために民主党政権下で提供された莫大な資金を、ゼレンスキー政権はFTXに投資。それなりの見返りを期待していた事実が白日の下にさらされつつあるわけです。このままではアメリカ、ウクライナを巻き込んだ大スキャンダルに発展する可能性もあります。
その後も事態は刻々と変化しています。当初、バハマの留置所に収監されていたSBFですが、FBIの護送付きの特別機でニューヨークへ移送されたのです。しかも、ニューヨークの裁判所に出頭し、3.4億ドルという保釈金を支払うことで保釈を勝ち取り、両親の住むカリフォルニアの高級住宅地パロアルトに移りました。
裁判が正式に始まるまでの暫定的な処遇ですが、自己破綻し、「手元には10万ドルしかない。クレジットカードも1枚だけだ」と同情を買おうとしていた男が、どうやって日本円で510億円もの保釈金を用意できたのでしょうか。メディアの報道に依れば、両親が自宅を抵当に入れたとか、退職金も前借して必要な保釈金を工面したとのことですが、信じられません。
なぜなら両親の自宅の評価額ではまったく足りないからです。となると、これまで資金を受け取ってきたバイデン政権が裏から手をまわしたのか、共同経営者で中国政府ともパイプを持つ香港のワン氏が手を貸したのか、実に不可解な動きです。少なくとも、ソフトバンクの孫正義氏が救いの手を差し伸べたことはあり得ません。
というのも、孫氏はそれどころではないからです。アリババの創業者のジャック・マー氏が中国から日本に移り住んでからすでに半年以上が過ぎました。もともと孫氏がアリババに投資したことで、ジャック・マー氏は大成功のチャンスをものにし、一時期は中国一の大富豪の座を射止めたのです。
その後、インターネットバブルが崩壊し、孫氏が資産の98%近くを失ったとき、再起のきっかけとなったのがアリババ株だったのです。孫氏とジャック・マー氏は義兄弟のような間柄に他なりません。そのマー氏が中国の習近平政権から要注意人物と見なされ、史上最大と期待された「アント」の上場を阻止されたこともあり、マー氏は孫氏を頼って家族とともに日本に密かに移住してきたのです。日本からアメリカ、イスラエル、スペインなどを頻繁に訪問しています。
その狙いは、新たなビジネスチャンスの発掘です。孫氏の紹介もあり、ビル・ゲイツ氏ら世界の大富豪らとの話し合いを重ねている毎日。彼らが最も関心を寄せているのが「食と医療」なのです。孫氏もコンピューターの世界に突入すると同時に「世界的な医療システム」の構築に「次なるビジネスチャンスを見出したい」と述べていました。
ジャック・マー氏はスペインでもイタリアでも新たな食文化の創造に役立ちそうな研究機関や企業を相次いで訪問。また、日本国内でも同様です。近畿大学の海洋生物資源の養殖研究の現場を熱心に観察。ビル・ゲイツ氏も個人としては今やアメリカ最大の農地所有者です。しかも、種子の保管や特許に関しては世界1を誇っています。「食を制するには種と農地を押さえる」という戦略が見え隠れします。
中国は世界最大の人口を擁しているわけですが、彼らの胃袋を満足させ、健康を維持管理するうえでの医療体制の充実は、ジャック・マー氏にとっては「ポスト習近平時代の中国」を左右する切り札と受け止めているに違いありません。ビル・ゲイツ氏はすでに「食べるワクチン」の開発に着手しています。コロナ禍を見越してワクチンの開発に投資を行い、ファイザーやモデルナの筆頭個人株主になったビル・ゲイツ氏です。
コロナの次に人類を襲いかねない新たな感染症への対策として、mRNAを埋め込んだ果物や野菜の研究開発を着々と進めています。また、大豆由来の人工肉の市場化にも積極的に取り組んできました。「インポッシブル・ミート」としてすでに広く流通しています。その延長線上で、母乳に代わる人工ミルクの開発にも先鞭を付けました。そして、この分野に最も熱心に応じつつあるのが孫正義氏とジャック・マー氏なのです。
インターネット時代の到来を予測し、出版とソフトウェア開発で世界を牛耳ることに成功した孫正義氏。ある意味では「未来を見通すパワー」を生まれながらにもっている希少な存在かも知れません。しかし、攻めるのは得意ですが、守るのは苦手のようです。このところスタートアップ企業への先行投資で相次いで躓いています。2022年の半年間でベンチャー企業投資による損失は3兆3,507億円に達しました。去る11月の決算報告の場では「投資してきた会社はほとんど全滅だ」と告白した孫氏。幹部社員が次々と辞職し、孫氏の元を去っています。後継者と目されたインド人やドイツ人もいなくなりました。
そのため、起死回生を狙ってか、英国の半導体設計会社「アーム」の上場に全力を集中すると発言。「従来のビジネスはCFOの後藤芳光氏に委ねる」とも、弱気の姿勢が目立ちます。とはいえ、常に未来を志向するのが孫正義流です。その未来図のなかで大きな地位を占めているのが「食と医療」、まさに「医食同源」ビジネスに他なりません。そこで欠かせない役割を担い得るのがジャック・マー氏とビル・ゲイツ氏との「三本の矢」ということです。
日本でも世界でもFTXの破綻によってビットコインに代表される暗号資産やデジタル通貨への信頼が揺るいでいます。そこで、裏付けのない暗号通貨ではなく、命や健康という実感できる価値を提供する方向に舵を切ろうとしているのが、孫正義、ジャック・マー、ビル・ゲイツの3人衆です。
2022年の年末、たった20日間で2億5,000万人もが新型コロナに感染してしまったのが、今の中国です。「ゼロ・コロナ政策」を国民の反発で緩和した習近平政権にとってはかつてない苦境と思われます。とはいえ、これは「3人衆」には願ってもないチャンス到来ということかも知れません。なぜなら感染症におののく15億の中国人を味方に付けるシナリオを描いているのが、孫正義、ジャック・マー、ビル・ゲイツの文殊の知恵集団だからです。まだまだ敗者復活の可能性は否定できません。
(了)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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