2024年07月16日( 火 )

韓国・不動産市場の急激な冷え込みで夜眠れない人々(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

高騰を続けていた不動産市場が急転

韓国 不動産 イメージ    天井知らずの上昇を続けてきた韓国の不動産価格が、米国利上げなどの影響を受け、下落基調に転じている。経済成長が続いてきた韓国では、文在寅前政権の5年間で、マンション価格は全国で1.8倍、ソウル市では2.2倍に急騰していた。新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期にも、行き場を失った大量の資金が不動産市場に流入、不動産価格の高騰をもたらした。ソウル市で10億ウォン(約1億円)を下回るマンション物件は少なくなった。富裕層エリアとされる同市江南地区では、20~30億ウォンのマンションもざらで、貧富の格差はますます広がるばかりで、多くの一般庶民は不満を募らせている。

 ところが、2022年7月をピークとして、不動産価格は上昇から下落に転じ、8月の前月比0.1%減から9月同0.2%減、10月同0.6%減、11月同1.1%減と下落幅を広げている。前月比1.1%の下落は、アジア通貨危機後の1998年6月以来となる24年ぶりの下げ幅。韓国の国土交通省によると、22年1~10月の全国平均住宅売買件数は、月4万5,000件に過ぎなかったという。06~21年の月平均は7万9,000件であり、42%も減少したことになる。ソウル市でも、06~21年は月平均6,500件であったが、現在は月に1,400件ほどの取引しかないという。これを受けて、22年10月末の売れ残りの住宅戸数は全国で4万7,217戸を記録、前年同期比の1万4,075戸から3倍以上に増えた。

冷え込みの原因は利上げ

 市況の冷え込みをもたらしたのは、金利の上昇だ。韓国では米国との金利差が開くとドルが流出することになるので、米国の利上げに追従せざるを得ない。22年9月、米国連邦準備制度理事会(FRB)は3会合連続で0.75%の利上げを実施した。それで、中央銀行の韓国銀行は6会合連続で利上げを実施し、政策金利を年3.25%に引き上げた。米国の利上げにも関わらず、インフレが収まる気配がなく、利上げは今後も続くとの予想が流れると、不動産市場には金利負担による住宅価格の下落が予想され、市場は急激に冷え込むこととなった。

 過去数年間、不動産価格は上昇を続けてきたので、バブル崩壊はある意味では予想されていたことだ。今回の不動産価格の下落の最大の原因は米国の利上げとされ、価格は引き続き下落し続ける恐れがある。

 不動産価格の下落は建設業界など経済全般に悪い影響をおよぼすため、景気低迷を心配する声も多い。住宅価格の上昇に乗り遅れまいと、ローンを組んで住宅を購入した人々は、利子負担が重くなり、大変なことになっている。さらに購入した住宅の価格が30%以上下落しているため、憂鬱になっている。

(つづく)

(後)

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