2024年07月16日( 火 )

韓国・不動産市場の急激な冷え込みで夜眠れない人々(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

米国の政策に振り回される世界

韓国 街並み イメージ    利上げを実施した米国に目を向けて物事を考えてみよう。米国はドルが基軸通貨である強みを生かして、自国に有利な政策を推進できる。新型コロナウイルスの感染が拡大した際に、景気を刺激するため通貨量を40%も増やし、5兆ドルを市場に供給した。その資金の相当量が金利の高い海外に流れ、全世界の資産市場のバブルを形成させるきっかけとなった。21年下半期には、すでに物価上昇の兆しがあった。

 ところが、歴史的に振り返ってみると、米国は自国に有利な政策を繰り返し実施してきたことがわかる。要するに、米国の巨大資本家は大量のマネーを刷って流通させ、資産バブルを形成させた後、急に不景気と価格暴落に誘導し、外国の資産をかなり安く手に入れていた。

 インフレの気配があったにもかかわらず利上げの時期を遅らせ、突然利上げに突入することによって、全世界の資産価値を暴落させ、米国は結果的に世界の資産を安く購入しているからだ。しかし、本当のことはわからないので、繰り返しそのようなことが起こっても、対応のしようがない。

苦しい日々の人々

 ローンを組んで住宅を購入した人々は利子負担の増加に苦しみ、利上げがさらに進むと住宅を売って利子負担から逃れようとする行動に出るかもしれない。そうなると、住宅価格をますます下げる要因となる。住宅が売れなくなると、住宅を建設した建設会社も資金繰りが悪化し、割引してでも住宅を売ろうとする。これも価格の下落を招く要因となる。このように不動産市場には価格を下落させる多くの要因がある。

 一方で、不動産の供給側面から考えると、新型コロナウイルスの感染拡大は、人材不足を招いただけでなく、人件費の上昇、それに建設資材の価格高騰もあり、住宅供給の制約条件となっている。すなわち今回の不動産価格の上昇は、供給の拡大というより、利上げによる価格下落であることはまちがいない。

 具体的なケースを紹介する。不動産情報サイトの情報などを見て、Aさんは、今までジョンセ(韓国の独特の賃貸制度の1つで、まとまった金を預ける代わりに毎月の家賃は払わない制度。家を明け渡す際にも全額を返してもらう制度)に住んでいたのだが、預けていた金を返してもらい、ローンを組んで10億ウォンの住宅を購入した。その後、住宅の価格が6億数千万ウォン半ばまで下がったのに、売却しようとしても買い手がつかない状況にある。夫婦の月収は約600万ウォンだが、支払い利子は毎月400万ウォンである。一方、中国や米国の不動産ファンドが中国から資金を引き揚げ、価格が暴落した韓国の不動産を大量に購入しようとする動きもみられる。

 今後米国の追加利上げの状況などで、不動産市場の冷え込みがさらに長期化する可能性も排除できない。韓国の家計負債が大きくなる中IMFをはじめ、世界の経済専門家は、金利負担が増えていくという韓国の状況をみて、不動産バブル発の経済危機に陥るのではないかと警鐘を鳴らす。

(了)

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