2024年11月23日( 土 )

ディスプレイ市場、中国勢台頭と韓国サムスン、LGの戦々恐々(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

液晶ディスプレイはすでに中国に抜かれている

iPhone イメージ    中国は大きな市場をもっていると同時に、ディスプレイ産業に巨額の設備投資をして、液晶分野における韓国企業の価格競争力を失わせた。中国政府はディスプレイ産業を育成するために、手厚い支援をしている。

 たとえば、中国で企業がディスプレイ工場を建てるとすると、地方政府が投資額の相当部分を負担し、残りは投資ファンドや政府が保証した銀行融資で大部分を埋める。企業が実際に投入する資本は少ない。

 さらに中国政府は企業が製品を製造するときに追加で補助金を与えている。原価を比較すると、中国企業の原価率は、韓国企業の7割程度である。その結果、韓国企業は液晶分野において中国企業と競争することがもはや厳しくなり、サムスンもLGも液晶分野から撤退することを決めた。それによって、世界の液晶テレビパネル市場の中国シェアは、昨年65.5%から、今年は7割を上回るのではないかと予想されている。韓国の世界市場シェアは10.6%から4.6%に縮小している。

 数年前から液晶パネルは、中国の低価格攻勢によって値崩れが生じているだけでなく、供給過剰に陥り、販売してももうからない状況が続いている。液晶はコモディティ化が急速に進展し、シェア上位のメーカーも赤字に陥っている状態が続いている。

有機EL(OLED)パネル市場も安心できない

 液晶パネル分野における中国勢の価格攻勢と供給過剰で市場を失った韓国企業は、OLED市場に注力しているが、世界経済が低迷していて、市場規模が思うほど伸びていない。それに液晶市場で韓国企業に追いついた中国勢は、今度はOLED市場にも狙いを定めている。

 専門家によって多少違いがあるものの、OLED分野における韓国と中国の技術差は1~5年までいろいろな意見がある。しかし、中国企業はすでに世界市場シェア10%を占め、急激に韓国を追い上げている。2024年まで23カ所の工場の新設・増設を予定している。

 さらに今年の秋に発売予定とされるiPhone15シリーズに中国の代表的なパネル会社BOEがその7割を供給することになるかもしれないという噂があって、韓国企業は神経を尖らせている。iPone14シリーズにはサムスンが7割を供給していたが、噂が本当であれば、サムスンの供給量は3割に下がるからだ。

 一方、LGはOLEDのなかでもテレビの大型ディスプレイに注力している。しかしテレビに使われるOLED市場も安心できない。現在は世界シェアの99%をLGディスプレイが供給しているが、BOEも24年から大型OLEDパネルを生産すると発表したので、韓国企業のシェアが減少することになるだろう。

アップルは独自ディスプレイを開発中

 このような状況下で、ブルームバーグ通信によれば、アップルは24年からアップルウォッチの新モデルに自社で開発したマイクロLEDディスプレイを搭載する予定であると発表した。アップルはマイクロLEDを開発するため、弛まぬ努力をしてきた。研究開発費だけでも260億ドルを投じた。

 今までアップルウォッチのディスプレイの8割はLGが供給してきた。iPhoneの7割はサムスンが供給してきた。今回のニュースは両社にとって大きなショックで、業界には衝撃が走った。一方アップルウォッチが占める比重は小さく、マイクロLEDがアイフォンに採用されるまでには時間がかかるので、その影響は限定的であるという意見もあった。

 韓国の主要な輸出品目の1つであるディスプレイ市場で、中国企業の台頭による大きな業界変動が起きている。

(了)

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