2024年11月21日( 木 )

厳しい環境を結束力と堅実さで乗り越える 安全機材用品のリーディングカンパニー(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)グリーンクロス
代表取締役社長 久保 孝二 氏

 1969年に交通標識製作所として創業して以来、工事現場等へ安全機材などの販売・レンタル業を軸に、看板事業、サインメディア事業を展開する(株)グリーンクロス。全国に57の営業所、社員数は約850名と、安全機材用品を取り扱う業界でトップクラスのシェアを誇る。コロナ禍においても増収増益を更新し続けている。代表取締役社長久保孝二氏に2022年を振り返ってもらうとともに、業界の状況および23年以降の展望について話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 緒方 克美)

22年は強気の経営戦略

(株)グリーンクロス 代表取締役社長 久保 孝二 氏
(株)グリーンクロス
代表取締役社長 久保 孝二 氏

    ──事業内容と業界の現状について教えてください。

 久保孝二氏(以下、久保) 当社は工事現場への安全機材・保安用品などの販売およびレンタル事業、看板事業、サインメディア事業を展開する総合安全商社です。1969年1月に、創業者である故・青山明とその大学時代の同期である元専務取締役・柴田泰三が交通標識製作所を個人創業しました。71年7月に法人化し、83年5月に現商号に変更しています。以後、地域に根差し、安全を通じて貢献することを使命としています。福岡市から西日本を中心にエリア拡大を続け、現在、事業所は全国57カ所、社員数は約850名になりました。購入からレンタルへの需要移行など、時代とともに変化していく顧客ニーズに応えながら、事業を展開しています。

 業界の現状について、安全機材業界はもともと他業種と比較して不況に強いという特徴があります。とはいえ、ウクライナ情勢などもあり、慎重な動きが続くとみられています。収益力向上を目指し、各事業の営業促進、物流システムの効率化に注力しています。

 前期は新型コロナウイルス感染症の影響でイベント関連の需要は逃しましたが、他で補うことができましたし、先を見据えて素早く対応することを意識したことも幸いでした。おかげさまで、13期連続の増収増益を達成しました。

標識の一例
標識の一例

    ──2022年を振り返ってどのような年でしたか

 久保 あえて「攻めの1年」にしました。コロナ禍で経済は停滞しましたが、景気はそもそも上下するものであり、不景気が永遠に続くわけではありません。ここで動きを小さくすると、いざ回り始めたときにチャンスを逃します。先を見越して人を採用して、物流センターに在庫を置く等の用意をしました。投資額は約30億円になります。これまでにないくらい積極的に動いたといっていいでしょう。他方で、安全機器事業のエリア拡大は控え、既存拠点の新築や移転に留めました。鳥取県境港市と兵庫県姫路市にロジスティクスを新築し、京都市の支社の移転および整備を行っています。香川県高松市のロジスティクスの新築移転も年始には終わる予定です。

 また、東京・東日本橋に6階建ビルを購入しました。東京に自社ビルをもつことで、採用試験や会社説明会、会議、イベントなど、これまで以上にさまざまな活動が進めやすくなりました。

 ──M&Aに積極的ですね。

 久保 M&Aを3社に対して実施しました。名古屋市の(有)山行舎(現・(株)サンエクセル)、大阪市のマクテック(株)、札幌市の安全機器(株)を子会社化しています。マクテックは看板業者で、当社が進めている看板事業の推進も見込んでの買収でした。ここはニッチな分野ですが確実に伸びるとみて、コツコツと種まき活動を続けてきました。看板等の屋外広告物は、老朽化した際などに安全性を保つために、設置時の申請だけでなく、継続的な管理が必要です。屋外広告士の資格を保有する専任の担当者が点検・診断、申請代行などをサポートしています。

 売上高については、概算ですがM&Aで10億円強のプラスです。それを除くと数億円増くらいで、グループ会社などは順調に伸びています。

 ──卓球の女子プロチーム「九州アスティーダ」のメインスポンサーになって変化は感じますか。

グリーンクロスのユニフォームを着たアスティーダの選手
グリーンクロスのユニフォームを着た
アスティーダの選手

    久保 21年に発足した「九州アスティーダ」のメインスポンサーに同年に就任し、継続しています。アスティーダは、「明日、未来」を意味する「アス」と、沖縄の方言で「太陽」を意味する「ていだ」を組み合わせた言葉で「明日に向かう」「明日は日が昇る」という意味が込められています。先行きが見えない社会情勢のなかでも、希望をもってまた明日を生きる、という心をもちたいです。チームの活躍と知名度向上は、社員たちの士気向上にもつながると考えています。

 ──新オフィスに移転して、いかがですか。

 久保 コロナ禍の20年に本社を移転して2年経ちました。急傾斜の階段やお手洗いなどの水回りを含めて、全体的な老朽化を心配する声が挙がっていました。新オフィスになり安全性も向上して安心しています。社員にも好評です。いつでもお酒が飲めるバーカウンターをつくり、卓球台を設置したり、スタイリッシュな打ち合わせスペースを設けたりと、環境整備にも工夫をしました。バーカウンターについて、社員は会社で飲酒するのを遠慮しているようなので、こちらから声掛けをするように意識しています。また、内定式の会場にするなど、随時活用しています。

本社のバーカウンター
本社のバーカウンター

    もともと「働き方改革」が世に浸透する前から、働きやすい環境づくり、社員の健康を守る取り組み、高齢者や障がい者の採用にも前向きに取り組んできました。「自ら考え、自ら行動する」という意識改革を進めてきたため、新型コロナウイルスで発令された緊急事態宣言下では、分散出勤とテレワークを取り入れることにも、皆冷静に対応できたと感じています。

 勤務体制自体はほぼ元に戻りました。それでもリモート化が進んだことで、ウェブ会議や説明会にもすっかり慣れましたので、今後もうまく利用していきます。

 ──近年、どのような新たな取り組みを行いましたか。

 久保 当社は、さまざまな分野における安全環境の構築を通じて、持続可能な社会とSDGsへの貢献に向けた取り組みを実践しています。社内設備における持続可能なエネルギーの活用、地域の発展と雇用に挑戦するなどしており、とくに尽力している項目は、社員の健康を守る取り組みと「子ども食堂」の運営支援です。

 20年6月に「健康経営宣言」を行い、健康診断率受診100%実施や、産業医の設置、健康関連イベント開催などの実績を積み、22年3月には「健康経営優良法人」に認定されました。良い仕事、充実した生活を送るためには健康であることが必須です。社員全員の健やかな心身づくりを目指して今後も力を入れてまいります。

 「子ども食堂」では、幼児を含む弱い立場にある人々へ、安全で栄養のある食事の提供を目指し、地域の皆さまとともに支援しています。貧富の差が広がり、社会には表からは見えない貧困が存在します。どんな境遇にいる人でも未来や自分自身に希望をもってもらえたらという願いを込めて活動しています。

(つづく)

【文・構成:清家 麻衣子】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:久保 孝二
所在地:福岡市中央区笹丘1-17-29
登記上:福岡市中央区小笹5-22-34
設 立:1971年7月
資本金:6億9,726万円
売上高:(22/4連結)204億9,673万円
TEL:092-737-0370
URL:https://www.green-cross.co.jp/


<プロフィール>
久保 孝二
(くぼ・こうじ)
1971年2月生まれ、長崎県出身。98年に(株)グリーンクロス長崎支社に営業として入社。2000年久留米支社長代理、04年開発次長、05年執行役員営業管理部長、08年取締役。11年4月に代表取締役社長に就任。

(後)

関連記事