2024年11月22日( 金 )

「九州はひとつ」 経済再生実現と幸福感の醸成に向けて(前)

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(一社)九州経済連合会 会長 倉富 純男 氏

(一社)九州経済連合会
会長 倉富 純男 氏

 1961年に、九州・山口経済界の一体化を唱えて創立された(一社)九州経済連合会(以下、九経連)。「九州はひとつ」を掲げ、九州全体を視野に入れた議論や提案を行うほか、内外に向けて九州の魅力を発信している。倉富純男会長に今後の経済再生に向けた取り組み、九州の将来像について、話を聞いた。

日本経済再生のために

 ──現在の経済情勢をどう認識すべきでしょうか。

 倉富純男氏(以下、倉富) ポストコロナへの人流再開への動きが進む今が正念場であり、経済活動の基本は人・モノのリアルな移動であると認識しています。2022年10月から全国旅行支援が始まり、インバウンドについてもビザ免除の再開や個人旅行の解禁など、V字回復に向けて始動しています。円安を嘆くばかりではなく、逆に利用することで日本経済を強くしていくという視点も大事です。

 急激な為替変動は、企業や国民生活に影響をおよぼしています。現在のプッシュ型の物価上昇に対して、短期的には、財政を使った補助金政策しか打ち手がないのかもしれません。ただ、一番求められる対策は、生産性を上げ、付加価値を高めるための新しい動きや挑戦であり、それに基づく力強い経済再生です。極端な円安で浮き彫りになったエネルギーや食料の安全保障の問題に対し、国が安定的な供給を確保するための政策を実施することも重要です。

 日本経済再生は待ったなしの状態です。ゴールはコロナ禍前の水準への回復ではなく、我が国が抱える構造的課題の解決に向けた「イノベーション」が必須でしょう。成長と分配の好循環を実現する「新しい資本主義」の実現に向け、企業の生産性向上、デジタル化による地方活性化、人材の流動化(雇用のミスマッチ解消)など、我々民間からイノベーションを起こし、成長力強化に貢献したいと思っています。

九州経済連合会 オフィス

    九経連は1961年の創立以来、「九州はひとつ」という基本理念に基づいて、高速交通体系など遅れた社会資本の整備促進や産業構造の高度化、地域格差の是正などを目指し、九州一体となって多面的な事業に取り組んできました。

 今後は従来の開発一辺倒の経済発展ではなく、ダイバーシティや多様性を尊重しつつ、DXやGX、さらにはCXという企業の改革の概念を効果的に取り入れながら、「九州将来ビジョン2030」においてありたい姿の1つに掲げているように、自らが「幸せ」というものを実感し、それを周囲に広げることで、誰もが「行きたい、住みたい」九州の実現を目指します。

 ──ハウステンボスが香港の投資企業「PAG」に売却された件について、どうみていますか。

 倉富 長崎オランダ村以来発展してきたハウステンボスですが、2010年に経営を引き継いだ(株)エイチ・アイ・エスが、創意工夫を重ねてきたおかげで、九州はもちろん日本でも有数のテーマパークとなりました。今後も九州にとって重要なインフラであり、資本が変わっても、その価値は変わることはないものと思っています。

 政府による国内旅行需要喚起策「全国旅行支援」や、インバウンドの水際対策の緩和は、観光客復活を後押しする大きなチャンスであり、なかでも九州観光誘客の強力なコンテンツとしてのハウステンボスの存在は欠かせません。観光業は周辺産業への経済波及効果も大きく九州の重要な基幹産業ですが、コロナ禍で最も大きな影響を受けた産業の1つであり、九州経済復活の観点からもハウステンボスのますますの発展に期待しています。

(つづく)

【茅野 雅弘】


<プロフィール>
倉富 純男
(くらとみ・すみお)
1953年生まれ、福岡県うきは市出身。78年青山学院大学卒、西日本鉄道(株)入社。都市開発事業本部商業レジャー事業部長、取締役常務執行役員経営企画本部長などを経て、2013年6月に代表取締役社長就任。21年4月から代表取締役会長。同6月、九州経済連合会会長に就任。福岡県経営者協会会長、九州経営者協会会長も務める。

(中)

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