久々の受注増にも喜べない韓国造船業界(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏一時は韓国輸出産業の稼ぎ頭であった造船業
近代の造船業はイギリスでスタートし、1970年代には日本で花を咲かせ、当時日本は造船業で世界をリードしていた。その後日本から造船技術を教えてもらった韓国造船業界は、日本の造船会社が不況で設計人材をリストラしていた間に、新しい工法の開発などに注力し、2003年以降、新規受注量、建造量、受注残量の3指標において、世界シェア1位を占めるようになった。07年5月を基準にすると、当時韓国の自動車輸出額は33億ドル、半導体の輸出額は30億ドルであったのに対して、造船業の輸出額は何と49億ドルを記録していた。世界で建造されている10隻のうち、4隻は韓国で建造された船舶であった。
しかし、世界金融危機(07~10年)が発生することによって、造船業は深刻な不況に見舞われることになる。この不況を乗り越えるため、韓国の造船会社が選んだ道は、海洋プラント事業であった。ところが、経験不足、低価受注、納期遅延などが原因で、この決定は韓国の造船業にとっては最悪の選択となり、造船会社は奈落の底に落ちることとなった。韓国の造船業は暗いトンネルからなかなか抜け出ることができず、四苦八苦していた。政府の支援やリストラなどで何とか踏ん張っていたが、20年下半期からようやく新規受注増加という光が造船業に差し始めた。
だが、韓国の造船業は近年、急激に台頭してきた中国勢に価格面で太刀打ちできなくなりつつある。そこで韓国はコンテナ船やバルク船よりも、LNGタンカーなどに力を入れた。韓国はLNGタンカー以外にも超大型コンテナ船や超大型原油タンカーの建造ではまだしばらくは中国や日本をリードしていた。なかでもLNGタンカーは付加価値の高い船舶で、氷点下163度で液化した天然ガス(LNG)を運搬するので、運搬の途中で液化ガスが気化して消失することを最小化する高い技術力が求められ、今までは韓国企業の独壇場であった。韓国企業が市場全体の9割以上を受注していたのである。そのような状況下、エネルギー価格の高騰とウクライナ戦争の影響などにより、LNGタンカーの需要は増加し、韓国企業は26年の年末まで受注予約が入っている。
韓国でしか建造できないと信じていたLNGタンカー市場にも異変が起きている。2年連続世界1位の座を中国に明け渡した韓国造船業界は、今まで韓国企業の独壇場であったLNGタンカーの分野でも中国に急浮上を許していて、韓国造船業の地位は揺らいでいる。
世界の環境規制の強化、ウクライナ戦争の長期化などによるヨーロッパでのLNG需要の増加などにより、LNGタンカーの需要は当面の間堅調が予想される。水素燃料や蓄電池を活用した大型船舶などの選択肢もあるが、まだ価格が高く、LNG時代がしばらく続くことが予見される。
(つづく)
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