耐震不足マンション訴訟、久留米市の「入り口」論争が崩れる
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鹿島建設(株)が元請として施工したマンションの耐震性が欠如し震度6強の地震で倒壊の恐れがあるとして、住民らが久留米市を相手取って、建て替え命令を出すように義務付けを求めた訴訟(義務付け行政訴訟)で8月27日、福岡地裁(岡田健裁判長)で口頭弁論があった。住民側が、耐震性についての構造再計算(構造検証)の基となる図面が建築確認時のものであることを示す証拠を提出した。これまで久留米市は「住民側の構造再計算を信用できない」とするなど、「門前払い」「入り口論争」してきたが、久留米市の主張が崩れたかたちだ。
図面が、消防保管図面と一致
車で裁判所に入る久留米市の担当者らに「建て替え命令を出せ!」とアピールする住民ら=8月27日、福岡地裁前 住民側は、訴状などで、一級構造建築士仲盛昭二氏が、マンション管理組合に保存されていた建築確認申請書や添付図面を基に構造再計算した結果、耐震強度が建築基準法の基準の35%しかないと明らかにしていた。
久留米市は、「建築確認申請書の保管期限を過ぎたため廃棄したため、建築確認時の欠陥の有無が確認できない」などとして、住民側が構造再計算の基にした図面が建築確認申請時の図面と同一かどうか不明で、「信用性がない」としてきた。この日の口頭弁論で、住民側は、久留米広域消防本部に保管されていた建築確認申請書添付図面の写しを入手したところ、管理組合の保管していた図面と同一だったとして、証拠提出した。
提訴前の2013年から住民側は久留米市に対し、構造再計算を示して耐震性の欠如を訴えてきたが、久留米市は構造再計算の検証を拒否し、裁判でも構造再計算そのものを「信用できない」と取り合わず、「入り口」論争で終わらせ、検証に立ち入ろうとしなかった。消防本部が保管していた図面によって、住民側が根拠とした図面が建築確認申請時のものと一致することが明確になり、久留米市は構造再計算の中身に反論せざるを得ないことになった。
建築確認当時のプログラムでも検証済み
久留米市が「構造再計算は、建築確認された当時の構造計算プログラム(SS1)を用いないと建築基準法に違反しているとは言えない」として、構造再計算の中身の議論に入らない姿勢を示してきたのに対し、住民側は、裁判前に久留米市都市建設部建築指導課の指導に応じてSS1(US2)による構造検証結果も提出(その耐震強度は21%)済みだと反論。耐震強度の不足は証明していると指摘。近く、SS1(US2)による構造再計算結果を証拠として出すとしている。
また、久留米市は、「建て替え命令を出す権限がない」などと主張し、義務付け訴訟の要件を満たしていず、適法ではないとして請求の却下を求めている。「門前払い」を求める主張をしてきた。
住民側は、建築基準法は「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」のが目的なので、違法・危険なマンションを購入させられた住民らの保護のために、施工した鹿島建設に建て替えを命じることができると反論した。問題のマンションは、久留米市にある「新生マンション花畑西」。元請・鹿島建設、地場建設会社が施工し、設計は(株)U&A設計事務所、設計監理は(株)木村建築研究所で、新生住宅(株)が分譲した。鹿島建設らは、住民らが損害賠償を求めた別の訴訟で請求棄却を求め全面的に争う姿勢を示している。
【山本 弘之】
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