耐震不足マンション訴訟、新局面!(1)~「入り口論争」
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耐震強度が35%しかなく、「恐怖の館」と住民が地震に脅える日々を送る「新生マンション花畑西」(福岡県久留米市)。久留米市は、住民側専門家による構造検証(構造再計算)を「信用できない」として、その内容の検証を拒否してきたが、信用性を裏付ける図面が発掘されたことから、久留米市の「入り口論争」「門前払い」が成り立たなくなった。
問題のマンションは、元請・鹿島建設、地場建設会社が下請施工し、設計は(株)U&A設計事務所、設計監理は(株)木村建築研究所で、新生住宅(株)が分譲した。
2013年2月頃に、住民側の依頼を受けた一級構造建築士の仲盛昭二氏がマンション管理組合に残されていた建築確認申請書の添付図面や構造計算書を基にして、構造再計算をしたところ、耐震強度が35%しかないことが判明した。構造計算プログラムによっては、耐震強度21%という結果に、住民は「殺人マンションだ」と恐怖した。
久留米市は、住民らの申し出を受けて、いったんは構造再計算の検証を約束したものの、反故にし、「検証できない」と拒否した。そこで、救済を求める住民らはやむなく久留米市を相手取って、鹿島建設らに建て替えを命じるよう義務付ける行政訴訟を福岡地裁に提訴。現在審理が続いている。消防署に図面があった!
久留米市は、建築確認申請書や添付図面などをすでに廃棄しており、管理組合が保管していた図面などが、建築確認申請時のものかどうか不明だ、信用できないなどと「入り口論争」して、安全性の検証を避け、住民側の構造再計算の内容に立ち入らないようにしてきた。
ところが、8月27日の口頭弁論で、住民側が、久留米消防本部(久留米消防署)が保管していた建築確認申請時の図面(写し)を証拠として提出し、管理組合保管の図面と同一なのが明らかになった。建築確認申請書(確認通知書)は、正本、副本がある。正本は、久留米市が保管していたが、保管期限が過ぎ、市は「廃棄した」と主張している。副本は、建設工事中には、施工業者が建設現場事務所で保管し、竣工後、所有者(今回ではマンション管理組合)に引き渡される。
住民側からすれば、管理組合が保管していた申請書(確認通知書)が本物であることは疑いようがなかった。もし偽物だというなら、住民が偽造したか、偽造されたものを引き渡されたかになる。青焼きコピーなどの約20年の経年劣化などから見ても、住民らが偽造するのは極めて困難。施工した鹿島建設が、偽造して引き渡すのも常識的には考えられない。
もともと、「信用できない」という久留米市の主張には無理があるが、正本が廃棄された以上、本物だという証明も難しかった。
鹿島も写しを保管していると思われるが、任意提出する可能性は少ない。そこで、住民側の「本物だ」という主張は、理屈上の話でとどまっていた。「もう一歩、ダメ押しがほしい...」。専門家らによる対策検討で声があがる。
「あそこが保管しているはずだ」。住民を支援している一級建築士の1人が思い出した。公的機関にはどこにも存在しないはずの確認申請書(書面と図面)がそこから出てきて苦労した経験があるが、今回は、今ある確認申請書が本物だと示す証拠になるはずだと、ひらめいたのだった。(つづく)
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