スマート農業の発展により、100年続く持続可能な農業を実現(前)
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AGRIST(株)
代表取締役CTO 秦 裕貴 氏宮崎県児湯郡新富町に拠点を置き、「100年先も続く持続可能な農業を実現する」をビジョンに掲げるAGRIST(株)。農業とIoTを融合させ、農業における人材不足や高齢化などの問題を解決するために農業用ロボットを利用した研究を重ねている。同社の創業メンバーである代表取締役CTO・秦裕貴氏に話を聞いた。
就農の壁を軽減し、農業従事者の誕生を後押し
──どのような経緯で設立されたのですか。
秦裕貴氏(以下、秦) 私は学生時代、北九州高等専門学校に通っていましたが、ずっと農業にも興味をもっており、卒業後は新規に就農したいと考えていました。しかし、農学部で学んだわけでもない私が農業で生計を立てていくことについて考えれば考えるほどに高い壁があると感じたため、一度は農業の道をあきらめ、高専の先輩方と高専内でロボットやドローン、IoTデバイスなどの試作品開発を行う会社を立ち上げ、活動していました。
そのようなとき、宮崎県児湯郡新富町に拠点を置く「(一財)こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)」の代表理事を務めていた齋藤潤一氏(現・AGRIST代表取締役CEO、以下齋藤)が、人材育成活動の一環で高専にきて、高専生を対象とした講演会が行われました。こゆ財団は、SDGs項目「住み続けられるまちづくり」の達成を目標として新富町が旧観光協会を法人化し、2017年4月に設立された地域商社です。18年には、1粒1,000円の「新富ライチ」のブランディングなどにより成功させた「稼いで街に再投資する」循環モデルが評価され、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部より地方創生優良事例に選出されています。
講演が終わった後、高専発ベンチャーの活動に興味をもった齋藤が会社を見にきてくれ、こゆ財団の活動や新富町の農業の話を聞いていくうちに、農業、そして新富町についてさらに興味が湧きました。後日、実際に新富町を訪問した際には、町役場の方の情熱や、地域の農家の方々の新しいものを積極的に取り入れていく姿勢を垣間見ることができました。
ここなら、農業のより良い未来をつくる活動ができる。そう思い、齋藤、そして高専のベンチャーで一緒に活動していた高辻の3名でAGRISTを創業することになりました。
──貴社の事業について教えてください。
秦 当社は現在23名で事業を行っており、うち14名がエンジニアで、2名が農場担当となっています。メンバーの約6割は宮崎県外から移住してきています。主な事業はピーマンの自動収穫ロボット「L(エル)」の開発と自社農場での農作物の生産・販売です。ロボット開発と農作物生産の両方を行っていることが特徴です。
ピーマンから取り組んでいるのにはいくつか理由があります。まず、ピーマンは収穫期間が8カ月以上あり、収穫作業の負荷が非常に高いため自動化のニーズが高いこと。次に、新富町に先進的な農家が多く、その農家がピーマン農家であったこと。そして、ピーマンはほかの作物に比べて軽くて丈夫なので取り扱いやすいこと。これらの点から、まずはピーマンの自動収穫ロボットの開発を始めました。
私たちの目標は持続可能な農業を実現することで、収穫ロボットはそのための手段のうちの1つです。農業の現場を総合的に知るために自社も生産者として栽培に取り組んでいます。ロボット以外にも農産物の収穫率を高めるソフトウェア「agriss」の開発も併せて行っています。ピーマンの生育状況、ハウス内の環境などのデータをロボットから収集して解析し、収穫量や病害虫の予測することで、生産性向上や所得の向上が期待できます。さらに技術が普及し世界で活用されるようになれば、安定的な食料の供給が可能になり、ひいては持続可能な未来の実現に貢献できるようになると考えています。
農業は人手不足や高齢化問題など多くの課題を抱えています。我々が拠点を置く新富町では、農業従事者が集まり「儲かる農業研究会」という勉強会を開催しています。ここでは地域の生産者同士が自らの農場で実践した取り組みの結果を持ち寄って議論し、より儲かる農業のかたちを模索しています。当社もその場に参加し、地域の生産者の方々と実際に話すことで、課題が浮かび上がるとともに、それらに迅速に向き合うことができ、双方にメリットのある有意義な場となっています。農業が盛んな地域に根ざして、現場の声をききながらアグリテックに取り組んでいるのも当社の特徴の1つです。
(つづく)
【立野 夏海】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:秦 裕貴(CTO)
齋藤 潤一(CEO)
所在地:宮崎県児湯郡新富町富田東1-47-1
設 立:2019年10月
資本金:3億円
URL:https://agrist.com
<プロフィール>
秦 裕貴(はた・ひろき)
1993年、福岡県福津市生まれ。北九州工業高等専門学校を卒業。ロボット研究などを手がける傍ら、農業に興味をもつ。19年に「こゆ財団」の齋藤潤一氏に出会い、AGRIST(株)を設立。22年4月、代表取締役CTOに就任した。法人名
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