ライフラインを支える物流業界～「2024年問題」を目前にした経営戦略～

（株）田川産業
代表取締役社長　大西 宏治 氏

物流の専門家集団として

　──設立から現在の事業内容についてお聞かせください。

　大西宏治氏（以下、大西）　当社は1975年に創業し、96年の（株）への組織変更を経て現在48年目になります。私が3代目として代表を引き継いでからは28年です。5名ほどでスタートした会社ですが、現在は役員、運転手、倉庫担当、事務担当の計42名で稼働しています。

　事業内容としては、一般貨物運輸事業、物流センターコンサル事業、倉庫事業、荷物取扱事業、軽貨物事業などを展開しており、本社は福岡市東区の箱崎インターのすぐ近くです。東区蒲田と糟屋郡粕屋町に事業所を設置しています。

　──要となる事業と経営方針について教えてください。

　大西　一般貨物運輸事業が主となります。大手印刷会社と業務提携しており、印刷物の運送を一手に引き受けています。当社は「長く続く信頼関係」を大切にしています。一度契約した相手と、何十年と長く付き合っていける関係をつくっています。もちろん常時、営業活動を続けて、販路拡大も図っていますが、基本的には既存の取引先との関係を育むことに重点を置いていますね。

　経営においては、人を大事にすること、まずは社員が「勤めていてよかった」と思える会社にすることを考えています。社員にはそれぞれ家族がいますので、彼らの幸せはそれぞれの家族の幸せにつながります。当たり前ですが、社員が幸福であれば、日々の業務も円滑になり、結果的にはすべてに良い影響をおよぼすことになるのです。

物流が止まれば経済が止まる

　──運輸業の動きは、私たちの生活にどう影響するのでしょうか。

　大西　世間ではどちらかというと運輸業は下に見られがちです。しかし、我々は社会生活や経済循環の基盤を担っています。物流が止まれば、経済は止まります。スーパーマーケットで食材の購入もできなくなり、あっという間に生活が立ち行かなくなるのです。人間でいうと血液のようなものですね。今冬の大雪は高速道路が全面通行止めとなり、運送に大きな支障をきたしました。このように、地震や水害など大規模な自然災害が起こって初めて、気がつくくらい私たちの仕事は社会に浸透しており、ライフラインを支える極めて重要な役割をはたしていると自負しています。

　──社員教育で取り組まれていることはありますか。

　大西　当社では朝礼や勉強会などは行っておりません。その分、1人ひとりに直接、声掛けをして、短時間でも顔を見て話をするように、意識しています。とくに長距離を運転するドライバーは心身のメンテナンスがとても重要です。彼らが一歩会社から出ると、私には何もできません、信じるしかないのです。信頼関係の上にすべてが成り立つことを忘れないようにしています。彼らとのちょっとした雑談のなかでも、体調や精神状態をよくみるようにしていますね。

　──今後の物流業界の未来を見据えた、事業計画などあればお聞かせください。

　大西　物価上昇の影響で、物流業界でも資材費はもちろん、燃料費の高騰が続いています。今後は当社のような中小企業は、厳しい状況になるのではと見ています。トラックドライバーに対する時間外労働の規制が強化されることで、輸送量の減少とドライバーの離職増加が懸念される「2024年問題」も気になるところです。「荷主や消費者を巻き込んで対策を」と国も具体策の実施に向けて急いでいますが、業界全体の動きもしばらくは不安定かもしれません。M&Aも進み、それによってまた新たな物流拠点ができてくるでしょう。こうしたことを踏まえて、販路拡大以外に多くの方面の情報収集にアンテナを張っています。

　現場でできることは、基本的に業務を外注せずに内部で完結させること、受注単価を上げて、それにかかる時間を減らして効率化を進め、生産性を上げるなどの、小さな努力を積み重ねていく必要があります。しかし、単価を上げることは容易ではありませんので、堅実にできることから取り組んでいます。

　今後も、世のため、人のために、まずは社員とその家族の幸せを実現できる会社を目指して、一層努めてまいります。

【文・構成：清家　麻衣子】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：大西 宏治
所在地：福岡市東区箱崎ふ頭1-5-1
設　立：1996年11月
資本金：1,000万円
ＴＥＬ：092-643-5450
ＵＲＬ：http://www.tagawasangyo.com/

＜プロフィール＞
大西 宏治（おおにし・こうじ）
1964年8月生まれ、大阪府出身。関西大学卒業後、96年、（株）田川産業入社。97年に代表取締役社長就任。ライオンズクラブ国際協会337-A地区 4リジョン リジョンチェアパーソン。趣味は野球観戦。