2024年12月27日( 金 )

楽天モバイルの断末魔~沈み行く泥船(後)

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 楽天モバイルの底が抜けた。大赤字決算の次は高額不正。楽天グループの携帯電話会社・楽天モバイルは断末魔の様相を呈している。
 船に巣喰っているネズミは、その船が沈没前に船から逃げ出すと言われている。楽天モバイルの幹部はまるでネズミのように泥船から逃げ出した。しかも、行き掛けの駄賃とばかりにカネを引き出している。楽天グループ総帥・三木谷浩史会長兼社長が楽天モバイルに見切りをつけるのは秒読みに入ったようだ。

楽天モバイル、4,928億円の営業赤字

 楽天モバイル元部長の佐藤容疑者は、日本ロジステックの元常務、三橋容疑者、TRAIL社長の浜中容疑者と共謀して、楽天モバイルからカネをむしり取ったのか。楽天モバイルの破綻は時間の問題。その前に、行き掛けの駄賃とばかりにカネを引き出したのだ。

 楽天グループの2022年12月期の連結決算は、最終赤字が3,728億円と過去最大となった。携帯電話基地局などの設備投資がかさんだ楽天モバイルで、4,928億円もの営業赤字を計上したことが最大の要因だ。

 楽天モバイルの契約獲得も苦戦が続く。22年12月末時点の契約数は506万件で、3月末時点から9カ月間で62万件減った。モバイル事業の営業黒字化には1,000万件以上が必要だとの市場の見方があり、いまだ黒字化のメドは立っていない。

 銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も1兆7,000億円を超えた。社債償還が3年で9,000億円にのぼる。楽天モバイルの設備投資にカネをつぎ込んできた「ツケ」は、想像以上に重い。

 楽天モバイルは先発の大手3社に比べて基地局が少ないという焦りから基地局の整備を急いだという事情があり、カネは無尽蔵に出たという。経費はどんぶり勘定だ。楽天モバイルは、まさに沈み行く泥船。沈没前にネズミたちがカネを絞り取って、逃げ出したのである。

菅義偉首相に手玉に取られる

SIMカード イメージ    楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、さまざまな事業に進出したが、最大の失敗が楽天モバイルの携帯電話事業である。

 創業事業の楽天市場がアマゾンに伍するのは絶望的だから、次の基幹事業を探していた。楽天が押さえたいのは、スマホを使用する電子決済。利用者のカード情報や購入履歴などのデータを手に入れるには、ハードを握るのが一番早い。

 三木谷氏が期待するのは、楽天ポイントを呼び水にクレジットカードや金融サービスに顧客を囲い込む「楽天経済圏」と、モバイル事業の相乗効果だ。

 三木谷氏は菅義偉首相に接近した。菅首相の「直轄地」と化した総務省を旗振り役に進む携帯電話業界改革。菅首相は楽天を後押しした。

 三木谷氏の楽天は、先行する携帯電話大手3社の当時の大容量プランに比べて割安な料金を「武器」として、2020年4月、携帯電話事業に本格参入した。

 だが、参入直後から目算が狂った。菅義偉政権は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社に値下げを求めた結果、3社は値下げに踏み切った。

 菅政権側は、携帯大手3社の値下げを引き出す呼び水として期待しただけで、大手3社が値下げを実施したことで、楽天はお役御免になったのが実情だ。政治を利用するつもりが、政治に利用された。二階に上がってハシゴを外されたのだ。

 その結果が莫大な借金と赤字の山。底が抜けた楽天モバイルは死に体同然だ。

 証券アナリストの間では「年内に最終局面を迎えるのではないか。究極の選択は楽天モバイルからの撤退か楽天グループの身売りか」との観測が囁かれている。どうする?三木谷さん。

(了)

【森村 和男】

(前)

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