新たな時代を迎える日韓関係とバイデン政権の思惑(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸ユン氏を支えるキム・ゴンヒ夫人
3月16日、17日に来日する韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領ですが、岸田首相との間で新たな時代の日韓関係を切り拓くと並々ならぬ意欲を見せています。懸案の元徴用工訴訟問題の解決案も提示しました。この案については韓国内で賛否両論が渦巻いていますが、ユン大統領は「心配にはおよばない」と自信たっぷりです。
しかも、途絶えている「日中韓サミット」の復活にも言及しました。バイデン大統領からすれば、アジアの同盟国である日本と韓国が関係を改善、強化することは願ってもないことでしょうが、アメリカを最大の脅威と見なす中国との関係を重視するユン大統領には警戒感も抱いているようです。
これまでの韓国の大統領とは一線を画すユン大統領。思えば、昨年3月の大統領選挙を僅差で制し、韓国の新大統領に選ばれたユン氏ですが、その大統領選挙は韓国史上「最悪のネガティブ・キャンペーン」と言われました。何しろ、候補者同士の非難合戦にとどまらず、両候補の夫人に関する「粗探し合戦」にもなったためです。
この泥仕合を制したユン氏は検察総長出身ですが、政治、経済面ではまったくの素人に他なりません。そんなユン氏を支えてきたのがキム・ゴンヒ(金建希)夫人です。今回の訪日にも付き添います。夫唱婦随ぶりを臆するところなくアピールするなど、過去の韓国の大統領とはあえて趣を異にしているようです。
実は、2人が霊能者ともいわれる僧侶の紹介で出会ったとき、ユン氏は52歳、キムさんは40歳でした。当時、キムさんは海外の有名アーティストの作品を韓国に紹介するビジネスで大成功を収めていました。2017年には「展示ビジネスのスーパースター」として、「トレンドリーダー100人」にも選ばれています。彼女のモットーは「文化の力で人々の精神を目覚めさせる」というもの。商魂もたくましく、彼女の資産は7億円を超えており、次期大統領を目指したころの夫の貯金250万円とは雲泥の差でした。
ユン氏は「こんなに年の差も稼ぎも差があるし、ご縁はない」と彼女からもらった名刺を捨ててしまったとのこと。しかし、彼女のメルアドは記憶しており、悩んだ末、思い切って、気持ちをメールしたことで交際が始まったようです。彼女は「お金に縁のないこの人は自分以外の女性とは結婚できない」と思ったと告白。12歳の年の差ですが、12年に結婚しました。表には極力出ないで陰で夫を支えるのが彼女風。曰く「夫は私のために生涯、料理すると約束してくれました。その約束を10年間、しっかり守っています。国民の皆さんに約束したことも必ず守ってくれると信じています」とのこと。
大統領選挙期間中、夫に対する批判的な記事を書いた記者に向かって、「お前を牢屋にぶち込む」と発言し、物議を醸しましたが、それだけ夫思いなのでしょう。また、彼女はナイトクラブでの売春ホステス疑惑や経歴詐称騒動にも見舞われました。しかし、くじけず前向きで、選挙戦を勝ち抜きました。
とはいえ、ユン大統領の政党「国民の力」は議会では少数与党のため、前途は何かと厳しく、住宅価格の高騰、コロナ、男女・経済格差、北朝鮮、対中政策、日本との関係など、課題山積みの船出となりました。裏で支えるキム夫人の采配がユン大統領の行方を決するといっても過言ではありません。今回の訪日においても、キム夫人の動きは注目に値するはずです。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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